第35話 空港警察24時間
昔々、私はしょっちゅう海外旅行に行ってた。これはその旅先のことである。
①パラオ出国
帰国する飛行機に乗ろうと金属探知機の下をを通った。
「ウェイト!ウェイトっ!!」
私はのんびりしているので人の声なんて聞きやしないが、なんか私を呼び止めているらしいとあまりにうるさいのでやっと気づいた。
係員が険しい目で私を見ている。
私は金属探知機に引っかかるものを持ってないはずなのにと思いながら通り抜けると、ものすごい騒音がビリビリビリビリと鳴り響く。
ふと、自分が手にしていた飛行機のチケットを見た。
係員さんがチケットをホチキス一個でとめたはず。
まぁ、こりはホチキスだなぁ。
そう思いながらチケットをトレーに入れて金属探知機を通り抜けた。
静かだ。
反応して鳴るのがわかっていて何故ホチキスにつけるのか、何故係員はチケットをトレイに置かせないのかよく分からない。
私は肩をすくめながら飛行機に向かって歩き去った。
ちょっとバカだなと思いながら。
➁ベリーズ出国
バハマでは傷がないクイーンコンクシェルを一個1000円で売っている。
タコとイカとエビをミックスしたような味がするが、身を取り出すために真ん中を叩いて壊すのだ。
ベリーズでは誰でも取れるし常食だし、殻は生活ゴミとして捨てるのでいくらでも拾って来られる。
ついつい2個も拾ってしまった。
そして出国時の手荷物検査で引っかかった。
レントゲンで貝殻見えたのだ。
「こんな捨てるような重い貝を日本に持って帰るのか!!」
3人の男性係員が腹を抱えてゲラゲラ笑った。とても嫌味な笑いだった。
「これは母へのプレゼントだ。母はピンクの貝殻は幸運を運んでくれると信じてる」
確か風水であったと思う。
「ストップ!!」
笑い続ける男性係員たちを、険しい顔をした女性係員が止めてくれた。うん。働けよ。
女性係員にありがとうと言い、逃げるが勝ちとさっさと去った。
多分ベリーズの人達は知らないと思う。
クイーンコンクシェルのビーズは貝殻の中でも一番高い。
同じ10 mm 玉のタイガーズアイよりもさらに高い。
あの大きな貝殻一個5千円するのには。。
③オーストラリア トランジット
オーストラリアからヴァヌアツ行きの飛行機に乗ろうとした時のことである。
手荷物検査でまた引っかかった。
「ユア ポケットっ!!」
険しい声で言われた。
私の両方のポケットがパンパンに膨らんでいたのである。
できれば出したくなかった。
ポケットの中にはてんこ盛りのクッキーとチョコレートが入っていた。
ヴァヌアツひどんな食べ物が売ってるかわからないので買いだめしたのだ。
「オー! クッキー!」
それから係さんはとても優しく、まるで自分が子供になったような気がした。
ヴァヌアツではナガラミのような貝が売っていて1 kg 買ってみたが、あまり美味しいとは思わなかった。
④ロサンゼルス トランジット
「那由他ちゃんみたいなボヤボヤした子は、そこら辺歩いてるだけで殺されちゃうわよ」
「うんうん」
アジアンヘイトについてはネットでよく見かける。
本当に道を歩くだけで暴力に巻き込まれ重症を女性が多いらしい。
知らないところで入院するのも大変だろうが私の遺体を引き取りに来るなど家族に迷惑はかけられない。
アメリカと名がつくところには10回以上は行ったと思うが、トランジットの時はホテルの入り口から外に出たことはない。
ある時、ロザンロサンゼルス乗り換えバハマ行きで税関でひっかかった。
トランジットばかりでアメリカ本国に全く寄らないのが変だったらしく税務官の所に連れて行かれた。
と言ってもどう見ても裁判官にしか見えない。
私の方の兄は日系人がいて日本語の通訳をしてくれるらしい。
大丈夫かしらとじーっと通訳さんを見ていた。
「What are you doing?!」
「ナース!」
「How many times did you come United States?!」
パスポートに手を伸ばすたら遠くに教えられた。
「7 times. But everytime is transit!!」
ついでに肩をすくめといた。
「パーフェクト!!」
そして終了。
例えトランジットだけでもアメリカのスタンプがたくさん押してあると疑われることがあるのだとよくわかった。
海外旅行とは素晴らしいものだと憧れる人も多いかもしれないが狭い座席に押し込められてエコノミー症候群になったり、最後には観光するものが何一つもなくてフリマに日参したり映画を見に行ったりすることしかなかったりすると、多分もう海外旅行に行くことはないと思う。
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