第28話 おばあちゃんの大黒さま

主任は写真を撮るのが趣味だった。


額にしたコスモスの写真を見て私も絵を描いてみた。



「大黒さまの絵を描いて下さい」


その絵を見たご住職から依頼があった。


「いいですよ」


簡単に引き受けたものの実は困った。


私は植物画しか描いた事がない。


仏画とは何ぞや?


習っていた友達いたけど確か今は紀伊の山奥だとか。


画家の友達もいるが、彼女も植物画専門。


困った困った。


よくお参りするお寺の一郭に大黒さまが祀られているとネットで見た。


 私は如何に描くべきですか?


 心のままに描くが良い。


大黒さまは、そう答えられたようだった。



色々調べて頑張った。


その姿をじっと見ていたのはおばあちゃんだ。


わずかでも納得いかないと消し消し。


完璧ではない一ミリ線が違うと消し消し。


その度におばあちゃんが騒ぐ。


完成間近には拝むようになった。


「どうすんのよ、これ?!」


兄妹が騒いだ。


おばあちゃんから大黒さまは取り上げられない(汗)


もう一枚描こう!


今度は画材屋に行きキンキラキン画材をちゃんと買ってきた。


キンキラキン希望で買ったものが、水彩絵の具に混ぜるだけで、いきなりテンペラ画になったりでビックリである。


上に載せたスパンコールも、指で擦った金泥も、夜に輝くだろう。


増えた大黒さまが更に綺羅びやかになったとおばあちゃんは喜んだ。


あれっ?!と名入れで痛恨のミスに気づいた↘


自分のペンネームを誤字っていた(泣)


那由多じゃなくて那由他だった。


ちょっとカクヨムの名前を変えてすみません。


他のサイトも直しにいきます。


完成した大黒さまは掛け軸にして三浦海岸の法道寺に送った。


贈った相手の負担にならないように完成型で送るべきかなという私の考え方だ。


ご住職は大層喜んで、大黒さまを祝う場に私の絵を飾って下さる。


良かった良かった。



おばあちゃんは毎日何十回も大黒さまに手を合わせる。


額を買うのは簡単だがDIYで私が作ろう。


ダンボールを切り画用紙を貼り付けて、その上に絵を貼り汚れ防止に透明キッチン壁紙を貼る。


レンガ色の正絹の反物があるから裾上げテープで額のように周りを縁取ろう。


今は切った反物をチクチク縫っているが、私には縫い物の才能がないようだ。


単なる運針が、和裁の持ち方だと縫うのが一苦労である。


明日は裾上げテープを買いに行く。


アイロンがない時はヤカンか鍋で良いらしい。


それで正絹が画用紙にくっつくか疑問であるが、その為にボンドがある。


そうして、おばあちゃんの大黒さまは完成する。

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