第20話 適当人生

私は日常的に嘘を付く。

「那由他。いるかぁっ!」

「いないよ」

「そうかぁ。いないんだな」

「いないんだよ」


まぁ、嘘つきである。




私は日常的に年齢詐称する。


よく私の年をきいていた同僚が、ある日深刻な顔をして言った。

「那由他さんに年をきくと毎回違う。どうしてなの?!」

「それは私が自分の年を覚えてないからだ」

「そうかぁ!」

「そうなんだよ」



同窓会で年をきかれて言ったら大爆笑だった。どうやら多かったらしい。



「私の年なんて私が知るわけないじゃない!」


最近は家族が指折り計算して割り出す。


まだ何才もう何才は、自分で可能性を狭めるので覚える必要はないと思う。




人の名前も適当である。


『ブルーライトヨコハマ』を聞いていた。

「この歌手は誰?」

「浜崎あゆみ」

「そうかぁ。浜崎あゆみかぁ」


『不滅のあなたへ』を見ていた。

「この子はグーグルか?」

「グーグルだよ」



周りも適当である。


自動掃除機をおばあちゃんが呼ぶ。


「どこに行った~!! ジョジョ〜っ!!」



芝居仲間のミッキーマウス声優から、ニックネームを問われた事がある。

「何と呼ぼうと薔薇は薔薇」

「シェイクスピアか?」


正確にはぺんぺん草だが、ぺんぺん草が醜く取るに足らない草花だと誰が決めた?


平安時代から知れた薬草なのだ。


真贋は自分の目で見極める。


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