第19話 明日再生する。

昔々その昔、ロールプレイング本というものがあった。


乙女ゲームは一分で終わるが本なら別である。


選択肢を選ぶ→Aは23ページ54へ


という飛び飛び読みで、タンスなどあさるとすぐ死ぬ。


今でも思い出すのが『展覧会の絵』である。


記憶を無くした主人公がたくさんのモチーフをクリアして最後に出会ったのは、亡き友だった。


「君を亡くした事があまりにも悲しくて」


涙する主人公に友が優しく言う。


「馬鹿だな、君は。こんな所まで来て。生者の世界にお帰り」


最近クラシックを聞くようになり、『展覧会の絵』をあれこれ買った。


Facebookで「この音はホロヴィッツ。さすがだな」というコメントを読んで取り寄せた。


真剣に聞いた。


そして気付いた。


  これ葬送曲だ。


  私は死んだ。


気絶した。


天才の凄まじさを知った。


なかなか新鮮な気分だった。


それから寝る時にはたまにホロヴィッツを聞く。


泥臭く足掻く自分はどうしてもいる。


葬送曲と共に今宵死ぬ。


そして目覚める明日に私はまた再生するのだ。

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