第6話 ☆死ぬまで歌い続ける(後)☆
ある日叔母に会いに行ったら苦しくて苦しくて真っ青だった。何とか復調させたけど救急車を呼んだ方が良かったかもしれない。
他の親戚も心配になったが土産なしで行けないわ。
成田山でコロナ収束護摩祈祷に行き成田土産を買ってきた。
さぁ、出発だ!
スマホナビで道に迷いまくったが、そのお陰で美味しそうなどら焼きと玉子寿司を買えた。
親戚はみな元気だった。
亡き伯父に、私と母と叔母からの線香を。
帰りは従兄弟に送ってもらって色々話した。
伯父は生前、多くを事を語る人ではなかった。私は母からお祖父さんの事を少し聞いていた。
お祖父さんが煎餅職人を自宅に招いて、煎餅を沢山焼いてもらって皆で美味しい美味しいと食べた話。
お祖父さんが馬を飼っていて、お祖父さんがお酒を飲んでも馬がちゃんと連れて帰った。でも野犬に喰われて死んでしまった話。
昔は皆カイコを飼っていた。お祖父さんが紡いだ糸を機織りに出して仕立てて娘たちの嫁入り道具にした話。
話し続けるうちに従兄弟の悔いを聞いた。
「親父はもっともっと長生きするはずだった」
事故だった。
今朝笑っていたのに…もう冷たくなってもう二度と会えない。
自分が何かしていれば今もいたはずだ。
たらればという可能性は我が身を苛む。
「でも、身体が無ければ……」
従兄弟が耳を傾ける。
「叔父さんは入院中の母に付き添ってくれて、今は叔母さんが心配だと騒いでいるよ?!」
「そうかい」
従兄弟が少し笑った。
身体があると人は不自由で、会いたい人にもなかなか会えない。
成仏した叔父さんは、いつものように心配性で騒がしく元気いっぱいだ。
車内でカチューシャを歌った。
♪ヴィハチーラ ナビューク カチューシャ
ナビュソーキ べリュク ナクルトイ♪
「私は忘れない。私が死ぬまで歌い続ける」
私が口にする全ての言葉は約束である。
それが私のモットーだ。
誰かが大切に覚えている事で救われる心もある。
百年経てば灰になる。
人の生というこの須臾の一時を……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます