第六十四話 ヤドリギ

『こんにちは! 花言葉屋です! お品物のお届けに参りました!』


 インターホン越しに女性が映っている。


「はい。今出ますね!」

 僕はサンダルを履いて大急ぎで玄関へと向かった。ドアを開けると感じの良い女性が笑顔で立っている。


「こちらにサインをお願いします」


 僕は宛名を確認すると手早くシャチハタを押して箱を受け取った。ずっしりと重い。


「ありがとうございます!」


 女性が去っていくのを見届けると僕は早速箱を開けた。予定通り赤と緑のクリスマスカラーに綺麗にラッピングされたヤドリギが届いた。


「バッチリ」


 クリスマス当日。僕の家で仲の良いサークルメンバーとクリスマスパーティーを行った。小さいながら今日の為に買ったツリーを出して天井にヤドリギを飾り、ピザの宅配を頼んだ。他のメンバーがお酒、ケーキ、つまみ類を買ってきてくれた。

 パーティーはサークルの話で盛り上がったりゲームをしたりと楽しんだ。

 

 みんな酔いが回りまったりし始めた頃、可愛いかなちゃんがヤドリギの下に座ったとき僕は今だ! と、話しかけた。


「あ。ヤドリギの下に座ったね」


「ん? だから?」


「ヤドリギの下にいる女性にはキスして良いんだよ」


 かなちゃんの酔いは一瞬で醒めたらしく、目を見開き青い顔をした。


「は? キモ!」


 かなちゃんはすぐに場所を移動した。


 おかしいな? 海外の映画やドラマではみーんなキスしていたのに。

僕は首をひねった。

 そうか! 次に座った女の子には無言でいきなりキスをすれば良いんだな。

 

『ヤドリギ 花言葉 征服』

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