第六十三話 ブラックベリー

 ある夏の日の放課後。


 よく晴れた日で、四時を過ぎても燦々と陽がさしていた。

 下校時に茉莉まりは校庭の隅の畑にブラックベリーあるのを見つけ、つまみ食いしようとした時に同じクラスの芽依めいがブラックベリーの後ろから現れた。

 芽依はお下がりの汚れたしわくちゃの服を着ている。


「これは、園芸クラブのブラックベリーなんだから食べちゃだめだよ」

「あ、わっ! ごめんなさい。美味しそうだったからつい……」


 芽依はいつもお下がりの汚れた服を着て、ランドセルも文房具もなんでもお下がり。

 それをからかったり虐めたりするような奴はいない。そういう奴はいないが、皆自然と芽依とは距離を取っていた。


「そうでしょ。私が作ったの!」

「すごいね!」

「今日のクラブ活動で摘むんだ。つまみ食いじゃないなら食べても良いよ」

「え? 本当に?」

 芽依がいくつかブラックベリーを摘み取って茉莉に渡した。

「ありがとう!」


「なんで、私がブラックベリーを育てたと思う?」

「甘酸っぱくて美味しい! ……え? なんでって……? 食べたかったから?」


「そうねぇ。それも一理あるわね」


「不正解?」


「正解は皆には、わからないかもね」


『ブラックベリー 花言葉 孤独・嫉妬心』

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