第五十四話 百日草
今思うと、何で私はあんなことをしてしまったのか……。
本当に反省しています。本当に申し訳ありませんでした。
私と知子さんが知り合ったのは大学の入学式の日です。すぐに親しくなり、お互いに同じマンションに下宿していたので頻繁に家に行き来するようになりました。
大学では同じ講義を受けてランチもバイトも週末も一緒に過ごしました。
次第に私は知子さんに友達以上の感情が芽生えました。
知子さんを私の家に呼んで深夜……寝ているところを襲いました。
予め知子さんが悲鳴をあげられないよう口にはガムテープをとめて、腕は結束バンドで縛っておきました。
はい。女性の解体は初めてでした。とても、美しく清らかで官能的で……思い出しても身震いします。
ところが、知子さんは私がキッチンに行った隙に窓の鍵を開けて飛び降りたんです。二階だったので、怪我は大したことはありませんでしたが誰かが音で気付いたのか目撃したらしく救急車を呼びました。
本当に腹立たしいです。私の解体は完遂できず、知子さんは今も病院で眠っていると思うと……
窓から逃げるなんて思いもしませんでした。逃してしまったことを後悔しています。
知子さんは植物状態になってしまっているそうです。ご遺族……いえ、ご家族様には、本当にお詫び申し上げます。
最後に……私は知子さんの、お墓に百日草のお花を献花しようと思っています。百日草には『不在の友』という意味があります。この世から不在になったら献花に行きます。
ただ、百日草はしぶとく長生きする植物ですから。知子さんがそうならないことを望んでいます。
以上です。
『百日草 花言葉 不在の友』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます