第五十一話 ムスカリ
春になり庭一面に小さな青い花の花畑が出来た。ブルーベリーのような形のムスカリという可愛い花で、手入れも楽で毎年栽培しているがそれも今シーズンが最後だ。
離婚してこの家を出ることになったから。
夫はよく働き、愛想よく人付き合いし、多趣味で気が利く人だ。それが仇となったのか、浮気していた。相手は会社の新人の女の子だった。
ただの浮気なら、我慢に我慢を重ねて許してあげようと思ったが、女の子は妊娠をしていた。
私達は結婚して、五年。今だに子どもはいない。もちろん子作りはしていたのに中々出来なかった。
この一年、夫と夫婦生活はパッタリでレスだったが仕事が忙しいからと諦めていた。
が、夫は浮気のためにホテルに行って、ホイホイと相手を妊娠させた。
怒りで頭がどうにかなりそうだ。
私はムスカリを掴むと思い切り根から引き抜いた。涙が頬を伝う。私は夫を思い切り罵りながら花壇に植えてある花を全てむしり取った。
「あのふしだらな男がっ」「お前の子どもなんて汚らわしいんだよ」「あの女と地獄に堕ちろ」「子どもも地獄に堕ちろ」「二度と顔を見せるな」「二度とっ、息をするな」「お前らが生きてるだけで胸糞悪いんだよ」「死んでしまえ」「そうだ、死ねばいい」「お前らが死ねばいい」「くそっ」
その様子を電柱の影から見ていた夫は汚物を見るような目で妻を見ていた。
「ああ、君がそんな人だから俺は他の人を選んだんだ」
『ムスカリ 花言葉 失望』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます