第五十話 ハナズオウ 蔦の続き②

 教団が計画した子どもを誘拐する計画の日の朝。昨日の謎の痛み止めのせいなのか五人中三人は薬のやりすぎでヘベレケ状態だった。


 俺は傷が浅かったので痛み止めは一錠飲んで朝には痛みが引いていた。車の運転席には教祖様の信頼のおける幹部が座り、俺は助手席に乗った。

 後ろに三人乗っているが心ここにあらずな様子だ。ワンボックスカーの三列目のシートを倒し、そこにはガムテープ、結束バンドを置いて準備万端だ。出発すると幹部が俺に話しかけてきた。


「うちの教祖様がどうしてあぁも花にこだわるか知ってるか? つたの部屋に向日葵ひまわりの崇拝、そしてハナズオウ」


「知りません。……ハナズオウ……?」


「花言葉でこっそりと意図を伝えているんだ。それは教団の団員にだけ分かるように使われている花もある。後ろの三人は使い物にならなかったなぁ。アイツらはそのまんま解体だ」

「解体……?」

「バラして臓器を売りさばくんだよ」


(教団の金は臓器提供で得ていたのか……)


「だがなぁ。最近は金が足りなくなってきてなぁ」

「……はぁ……」


 突如、幹部はアクセルをものすごいスピードで踏み込み突進し始めた。


「な……危ないっ……!」 

 俺は恐怖のあまり座席に背中をピタリとくっつけた。


「部屋の入口にハナズオウを付けてきた。だから大丈夫だ」


 幹部の言葉なんて耳に入ってこない。

 反対車線の車がクラクションを盛大に鳴らす。幹部は車線など気にせず真ん中を走行し続けた。

「お前、警察なんだろ?」

 幹部はフフンと笑った。

「お前の姉ちゃんは教祖様の子を身籠っていたから見逃したがお前は駄目だ」

 ブレーキを掛けて止まった瞬間、エアバッグが出ると同時に喉仏に包丁が刺さっていた。


「お前も痛み止めを多めに飲んでおけば良かったものを」 


 意識が薄れる中幹部の顔がフロントガラスに反射しているのが見える。


「生きている間に解体すると、新鮮な臓器が取れるから急いで帰ろう」


『ハナズオウ 花言葉 裏切りのもたらす死』




 

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