第四十三話 赤いシクラメン

 結婚式会場はたくさんの花に囲まれ、新郎新婦は幸せそうに壇上に座っている。


「続きまして、ケーキ入刀です!」

「はい、恒例のあ~んです! 新郎、大きな口を開けて下さい!」

「はい。前でお写真をどうぞ〜!」


 司会進行も順調に進み会場は盛り上がっている。


 余興が始まり、歌やダンス、メッセージ動画のあとに新郎の親友による手紙の朗読が始まった。


「ええ……本日はこのような素晴らしい結婚式にお招き頂きありがとうございます。つよしさん、環奈かんなさん、本当におめでとうございます。私が二人に出会ったのは大学生二年生の時でした。ゼミが一緒になり、それからずっと一緒に勉学に励み、ゼミのメンバーで旅行や食事会に行きたくさんの思い出が出来ました。毅さんは、とても運動神経抜群でそれを生かして今の仕事に着き、環奈さんは優しく朗らかな方です。今日の為に私は赤いシクラメンの花束を持ってきました。花言葉は嫉妬です」


 その一言を区切りに会場が静まり返った。


「私は環奈さんが大好きでした。私の親友の毅と結婚するくらいなら、私がちゃんと告白して付き合って私が結婚したかったです。毅は、これまで女に手が早くて浮気をしまくり彼女がいても合コンに参加して毎回お持ち帰りしてました。環奈さんのような純粋な女性が毅とデキ婚するなんて……。今はこの赤いシクラメンは二人に嫉妬して贈りますが大切に育てて、何かあったら私を思い出して連絡下さい。環奈さん、待っています。本日は本当におめでとうございます」 


 私は読み終えて満面の笑みを称えて一礼した。

 新郎の怒号や客席からのヤジが飛んで来る。司会の人は慌てた様子で進行を始め、スタッフが私を会場の外に連れ出した。


「どうでした? 私の新婦へ気遣いの手紙泣けましたか?」


 スタッフは笑いを堪えていた。


「過去最高の手紙でしたね」


『赤いシクラメン 花言葉 嫉妬』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る