第三十四話 イカリソウ

 久しぶり〜! ランチ……三ヶ月ぶりだね!

 あぁ、仕事は相変わらず大変だよぉ。今は違う病院に行こうかなって思ってるんだけど、なかなかねぇ。看護師の求人は途切れないんだけど人間関係はねぇ……


 そうそう。最近、お見舞いに来る人がさぁ。ナースステーションの受付簿に名前を書くようにお願いしてるのに書いていかない人もいてさぁ。嫌になるよね。


 あ、この前なんてお見舞いに鉢植え持ってきてる人いたよ〜。鉢植えは根付くって意味合いだから良くないって知らないんだろうねぇ。


 あとはバラ持ってくる人。えっ……ほら〜赤い薔薇は血を連想させるからだめなんだって!

 あと、菊持ってくる人までいるのよー! お葬式の花でしょ。

 大抵の人は笑顔で受け取って、鉢植えなんて育てちゃってる人までいるよ。  


 この前さぁ、女子高生の患者さんがナースステーションに来てさ。誰かがお見舞いに花を持って来てくれたけど誰かわからないって言われてさぁ。受付簿にもそれらしき名前書いてないから『わかりません』て患者さんには伝えたけど監視カメラには映ってたのよ。別の階の高齢男性の患者さんがその女子高生の部屋に花をこっそり持って行ってたの!  

 

 気持ち悪くない〜?


 もちろん、厳重注意したよ。でも、女子高生が退院するまで気が気じゃなかったわ。


 花? イカリソウって知ってる? 船の錨に似てるからイカリソウって名前らしいんだけど、花弁の先が細長い花。その人の家で育ててたのを持ってきてもらったのかなぁ?ピンク色で可愛い花だったけど花を調べたら絶句よ。


 『貴方は私のもの、貴方を捕まえる』だって。ヤバイよね! もう気持ち悪い〜!

 挙げ句に、その花は滋養強壮で男性用の薬にも使われてた花なんだって。

 その患者さんまだ病院に入院してるのよ。はぁ〜。


『イカリソウ 花言葉 貴方は私のモノ

・貴方を捕まえる』

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