第十五話 オダマキ

 同窓会の真っ只中、いつも女子グループの中心にいた花崎楓はなさきかえではその美貌と抜群のスタイルで、今日も一番目立つ席に座っていた。

「楓全然変わらないね」

「もう、ミニスカートなんて履けないわ」

「スタイルが変わらなくて羨ましい」


「ありがと!」

 笑顔で返事はするものの彼女の中で美しくあることは当たり前のことだった。


 三十代半ばになり、自分より若いだけでちやほやされる女性は許せなかった。


(私のほうが綺麗なのに)


 絶対結婚しないだろうと思っていた女子が結婚していたことも許せない。それ以上に結婚式に呼ばれなかったことも苛立たせる原因だった。


(隠しやがって。男を取られるのが心配なのね……)


 私を口説いていたり、顔を見るだけで赤くなっていた男性陣も今や楓を羨望の眼差しで見る者はいない。


(こんなメタボな奴らにこっちだって興味ないわ!)


 会場の隅では数人がこそこそと話していた。

「なんで、楓来たの?」

「相変わらずマウント女だよね」

「二次会のことは内緒ね」


 同窓会が終わる頃に、会場スタッフが花を持って帰って良いと言ってくれたので、男性陣が会場にあった花を手早く花束にして女性全員に渡した。楓には、紫色のオダマキという花を花束にしたものが渡された。外側の花弁はなびらは紫で、内側は白い花弁の美しい花だった。


「ありがとう。紫の花って妖艶で綺麗よね」


 楓は嬉しそうに微笑んだが、花束を渡した男性は笑顔で交わすと、次の女性にはカスミソウの花束を渡していた。


(あーぁ。あんな小さい花で喜んじゃって)


 楓はオダマキの花束を抱えて帰宅した。


『オダマキ 愚か』

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