第十四話 彼岸花

 事件は、マンションの一室で起こった。被害者はベッドの上で首を切られ血まみれで倒れていた。大量出血で寝具に血が吸い込まれ、ベッドから床にまで大量の血が垂れていた。抵抗した痕跡はなく犯行に使われたと思われる包丁はベッドの下に転がっていた。

 鑑識が証拠を抑えている最中、数人の警察官はその異様な遺体を前にブツブツと話し合っていた。


「なんで、花が刺さってるんだ?」


 遺体は、腹部を縦に割かれそこに彼岸花が丁寧に十本刺してある。

彼岸花は遺体から栄養を吸収し続けているのか、死後三日経っても美しく真紅に咲き乱れていた。


 後に、鑑識で調べた結果、事件は他殺ではなく自殺だったと分かった。

自分で腹を割いて花を刺してから首を切った……という恐ろしい結末だった。

部屋には、彼岸花を購入した箱が残されており、花の販売元である『花言葉屋』に確認すると本人が購入したものだと分かった。


 箱の底にはメッセージカードが一枚残されていた。


『彼岸花 花言葉 諦め』


 警察官はここまでして何を諦めたのかと首を捻ったが、他の事件に向かう頃にはこの事件のことはすっかりと頭から消え去っていた。

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