15.雌

「起きたか。

気分はどうだ?」


 深夜、腕の中でもぞもぞと動き出した番の振動で目を覚ました。

振動すらも可愛らしいとか、生殺しっぷりがむしろたまらなく萌える。


「グ、グランさん、えと、おはよ」

「おはよう。

つってもまだ夜だ。

もう少し寝てろ」

「でも、着替え····」


 レンは離れようと袖から指先だけちょこんと出した両手で俺の胸を押す。

弱り顔に襟元からのぞく鎖骨と相まって理性を揺らせる。

マジで萌える。

首筋舐めたい。

もちろんだが、せっかくなのでそのまま堪能したいに決まってる。

俺の匂いに包まれる番····たまらないが過ぎる。


「駄目だ。

体が冷えきってたんだぞ。

ほら、今度は足伸ばして寝ろ。

少しは温まったみたいだし、俺も横になりたい」


 とりあえず最もらしい理由をつけて丸め込む。


「う····ん。

体痛かった?

ごめんね」

「いや、どうってことない。

また冷えたら今度こそ風邪引くぞ。

ほら、くっつけ」


 今度は腕枕で抱きしめる。

背中から腰にかけてのレン特有の柔らかい感触に再び理性を殺られそうになるが、離したくないので何とか耐えた。


 再び眠りに入った番の無防備な寝顔が可愛すぎる。

寒さで体力が削られたのか、いつもより眠りが深い。

本当に14才なら、襲ってドロドロに甘く快感だけを与え続けても良いんじゃないかと考え始める。


 おっと、不穏な気配を察してかレンは寝返りを打ち布団からはみ出そうになる。

もちろんさせるわけがない。

俺は細く華奢な腰に手を回し、枕にした方の手で首元から胸を抱き込んだ。

手の平が胸に当たる。


 ····何だ?

胸がほわんと柔らかく····隆起してる、ような?

思わず手の平に簡単に収まる慎ましい何かを揉んでしまった。


 ····これは····胸、なのか?

もう片方も触ると同じようにほわんと柔らかいが弾力もある、よな?


 そういえば、黒竜が俺達の性と違うと言っていたが····どういう意味だ?

性は雄だけで····いや、魔獣なら雌もいるな。


 なんとなくそれを思いつく。

確かに魔獣の雌は雄より脂肪があって同じような太さでも肉は柔らかい。


 ····いや、まさかそんな。

あり得ない、が····魔獣のような雌の体····いや、まさか····。

反射的に下を確認しようとした時····。


「ん····ぅ····ぃ、た····」


 不愉快そうに呻く小さな声でハッとした。

強く握ってしまったか。


 確認したい····が、駄目だ、今は耐えろ、俺。


 だがこれがレンの秘密なら、黒竜が森から出さないと公言しているのも頷ける。

下手な奴に見つかって捕まりでもしたら、実験魔獣と同等扱いされるに決まっている。

いたずらに孕ませようとだってされるに違いない。


 もし魔獣のように自然に孕むのなら、神殿に消される可能性もある。

なぜなら子供を望む場合、神殿内の孕みの大樹から取り出され、祈祷された孕み石をフィルメの腸に入れ、メルがそこに性を放つ。

子が産まれる時、孕み石を握りしめて出てきて守り石として肌身離さず持ち、伴侶が出来れば交換する。

難点は大体それまでに失くす者が大半というところだ。

肉食系獣人は小さい頃から特に動き回るから気づいたら失くなっていたりする。

俺のは、まぁ、そういう事だ。


 と他事を考えて気をそらしたいのに、抱き締めるこの柔らかな体があり得ないはずの考えに意識を巻き戻す。

否定したいが、しかし胸だけじゃない。

この体の柔らかさが俺の知る人属とは全く違うのだ。


 待てよ、もしかしたら何かの病気かもしれない。

知り合ってまだ間もないから下手に確認も出来ないが····。


 ····まぁいい。

その時が来れば嫌でもわかるし、レンが何であっても俺の気持ちは変わらない。


 俺はすぅすぅと眠るレンの頭に口づけると、全ての考えを放棄して目を閉じた。

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