13.第4王子の番

「グラン、お前、いつ?!

誰だ?!」


 今度はベルグルが早口だ。


「····1ヶ月前。

人属の····まだ子供だ····多分」

「1ヶ月前····まさかお前を助けた魔術師の子供か?」

「いや、本人だ」

「はぁ?!

子供なのだろう?!」

「14才だと聞いたが、もっと幼い。

子供特有の匂いもするが、小さくて可愛くて良い匂いだ」

「惚気るな。

人属なら番の感覚はわからんな。

信用されてなくて嘘をつかれた可能性はあるのか。

旅の魔術師というのは本当か?

居場所はわかっているのか?」

「やってる事は魔術師と変わらないが魔術師も旅もしていない。

魔の森に住んでる」

「何だと?!

そんな事が可能なのか?!

いや、確かに力のある魔術師····みたいな人属だから可能なのか?

現場の出血量からしてかなりの深手を治し····」

「右手と左足が竜の爪でぶっ飛んで、出血も多すぎてショック状態だったらしい」

「····は?

お前、戻った時無傷だったよな?

そんな治癒術聞いた事もないぞ!」

「だから黙っていた。

黒髪黒目だから、魔力量は多いんだろうし、魔獣にも好かれてるから問題ない」

「おい、黒髪黒目で人属の子供って今まで無事に生きてこれたのか?!

いや、だから魔の森なんかに住んでるのか?!

魔獣に好かれてるって何だ?!

あぁ、くそったれ!

何でそんな訳ありがよりによってこの国の第4王子の番なんだ····お前らしい番ではあるが····」


 ベルグルの声とデカイ体が机に沈んでいく。

特大のため息までついてきた。


 そういえばレンにまだ俺がこの国の第4王子だって言ってなかったな。

王位継承権は放棄してるし、あくまで騎士として生きてるから言うのを忘れていた。


「····本当に番か?

勘違いではないよな?」

「間違えるわけないだろう。

デカイ図体ですがるような目を向けるな。

大体王子といってもすでに爵位を与えられて継承権を放棄している。

兄上達は皆婚姻して子供もいるから誰が番でも問題ない。

という事で3日休みをくれ。

1ヶ月も経った。

忘れられてたら死ぬ」

「····忘れられるほど幼いのか?」

「いや、嘘のつけない素直ですれてない子だが、頭は良いはずだ。

だが番だと言ったら全力で拒否されて、獣体の毛並みで釣った。

そもそもまともに話したのは1日だけで手も出してない。

いい加減行かなかったら絶対無かった事にされて森にも入れなくされそうだ」

「毛並みで釣れるほど子供なのか?

森に入れなくはならないだろう」

「いや、黒竜の番でもあるから、黒竜に一言言えばどうとでもなる」

「····いい加減にしろ!

お前一体どんだけ爆弾発言するんだ!」


 勢い良く両手を叩きつけたベルグルによって机が大破した。


「····明日から3日だ」

「ベルグル、感謝する!

もう隊長業務は終わらせてある!」


 言うが早いかすぐに走り去った。


「お前そんな笑顔できたのか····」


 ベルグルの呆然とした声が聞こえた気がした。

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