6.レンの友達
「レン····友達って····それ、魔獣····」
「うん!
魔狼のウォンと魔鳥のキョロ!」
魔狼の黒い胸毛にもたれながら満面の笑みを浮かべるレン····すまん、どんな反応すればいいかわからん。
「····えっと、ウォンとキョロで、鳴き声から名付けたの····」
俺の無反応に、レンが不安そうな顔でわかりきった名の由来を教えてくれる。
「あ、あぁ、悪い、ちょっとびっくりしちまった。
グランだ。
よろしくな、ウォン、キョロ?」
「ウォン!」
「キョロ~!」
えっと、挨拶を返してくれたんだろうか?
「ふふ、ウォンちゃんもキョロちゃんもよろしくだって」
「そ、そうか」
レンがドアを閉めにウォンから離れると、ウォンがキョロを肩に乗せたまま近づいてフンフンと臭いを嗅いでくる。
キョロはじっと見つめてくる。
····俺、食われないよな?
「ほう、ウォンもキョロも気に入ったのか」
唐突に声がした。
ドアの方へ目を向けると、長身で長い黒髪に金の目をした黒衣の青年がレンを抱き締めていた。
思わず睨んでしまう。
「誰だ?」
「黒竜のファルだよ!
人の姿も取れるの。
ファルもおはよ」
「おはよう、レン。
たかが獣人ごときが俺の名を呼ぶなよ」
黒竜だと?!
そんな事より、おい、壮絶に艶っぽい顔でレンを撫でるな。
名前なんぞ呼ぶか!
レンも笑顔をふりまかないでくれ。
「ねぇ、ファル。
これからグランさんと薪を調達しに森の散策したいんだけど、いい?」
「····本気か?
ただでさえ貧血持ちが血を分け、モガッ」
「ファル!」
思い切り背と腕を伸ばしたレンがファルの口を小さな手で覆う。
「レン、どういう事だ?
貧血持ちはともかく、血を分けるとは?」
「何でもないよ、ふふふ」
レンは嘘をつく才能が無さすぎる。
まぁそこが可愛いんだが、俺以外の男の唇に触るのは許せん。
「レン?
嘘は駄目だと言っただろう?」
「うぇ、え、えと····」
「お前の手足をくっつけたものの、血を流しすぎてショック状態になったからレンの血を輸血した」
「ファル!」
クソ黒竜がレンの手をそれぞれ逆手に取って向かい合い、レンの顔を見つめながら艶やかに笑う。
手を取ったまま、バンザイの状態でレンは俺の方を向けられた。
焦ってる顔も可愛いが、俺以外の男に何をされてるんだ?!
「ファ、ファル?!」
「お前は3日間意識不明で寝こけてたが、レンも2日間動けなくなった。
血がたりないレンは眠ると息が苦しくなるのか何度も寝たり起きたりを繰り返してまともに横にもなれなかったぞ」
「そんなの言わなくていいの!」
必死で後ろを振り返って抗議の声をあげるが、手を離してもらえないからずっと俺の方を向いたままだ。
黒竜は笑顔を引っ込め、い殺すように俺を見ている。
「血をわけるとはどういう事だ!
俺の手足をくっつけてくれた事には礼を言うが、レンが傷つくような行為は今後は頼むからやめてくれ。
相手が誰であってもだ」
手足をくっつけたり、血を分ける魔術など聞いたことがないが、恐らく黒竜に頼んだのだろう。
黒を纏う最上位の竜ならできても不思議ではない。
「あの、ホントに大丈夫だから気にしないで。
それに血も私の型はあげるのはほとんど問題ないけど、毎回あげられるわけでもない····」
「そうじゃない!
レンが傷ついたり倒れたりするのが駄目なんだ!」
つい口調も顔もきつくなる。
レンはビクッとして泣きそうになるが、そんな顔をしても駄目だ。
「レン、もっと自分を大切にして欲しい。
生かしてくれた事には感謝するが、レンに何かあるのは嫌だ。
そう思うのは迷惑か?」
レンに歩み寄って柔らかい頬に触れる。
黒竜が手を離してレンを抱え上げて腕に乗せた。
目線は俺と同じになるが、少し離れてしまった。
「迷惑じゃ、ない、多分?
心配されるの嬉しいけど、何か恥ずかしいけど、くすぐったいね」
頬を染めてクスクス笑うレンが愛おしい。
あぁ、早く大人になってくれ。
口付けたい、抱きたい。
「俺達もレンを心配しているぞ?」
いつの間にか俺の真後ろにウォンが座り、レンに顔を近づけてペロッと頬を舐めた。
「うん、いつも守ってくれてありがとう」
レンが黒竜の首に抱きつく。
くそ!
ムカつく!
そのしたり顔やめろ!
俺の番を離せ!
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