第27話 屋上で

「で、吉野」

「はい?」

「なんで、屋上に俺たちは居るんだっけ?」


俺は隣に居る吉野に聞いた。


「ちょっとリフレッシュですよ。最近睨まれてばかりでかなり精神的に疲れましたから」

「あー、確かにな。何かしてくるではなかったが。そこそこ見られてたからなー」


現在俺と吉野は俺のマンションの屋上で星空観察中。というか寝転んでいるだけか。


俺は吉野とともに俺の住んでいるマンションに帰って来た。

なんか変だな。普通ならそれぞれ家に帰った。とかだが。俺の住んでいるマンションに帰った。つまりマンションには居るが俺も自分の家にはまだ着いていない。さらにはおまけまで付いている現状。って何言っているかわからなくなってきた。


まあとりあえず。学校帰りに吉野が付いてきて。なんかリフレッシュしたいやらで一緒にマンションの屋上に上がってきた。と、いうことである。ちなみに古市とは先程までここで電話で話していた。吉野は一緒に居るのがバレたくなかったのか。俺が話している間は屋上をぶらぶら歩いていた。まあここで俺は後輩からの愚痴を優しく全部聞いてやっていたんだよ。ってことである。


そして俺と古市の会話が終わると俺の隣に来て吉野が再度寝転んだ。

これがまあ今である。


「っか、今更だが。吉野は着替えてから来いよ」

「そういえば忘れてました」

「帰りに補導されても知らないからな?なんやかんやでもういい時間だし。次こそなんか揉め事起こしたら知らないぞ?」

「……なら……泊めてくださいよ」


なんか小さな声が聞こえてきた。何だって?


「なんでそうなる?って、ばあちゃんは?」

「今日はおじいちゃんの病院です。なんか先生から話が夜にあるやらで向こうに居るみたいです」

「ってことは1人だからこっちにのこのこと付いて来たのか」

「……そういうことです。1人は暇ですから。掃除とか全部しちゃいましたし」

「……なんというか。行動早いな。まあ別に泊まるのもいいんだが」

「いいんですか?」

「が、また寝てるとこ見たー。とか騒ぐなよ?」

「さ、騒ぎませんよ。先輩が覗かなかったら」

「吉野がちゃんと起きればなって、明日休みか」

「ですね。にしても先輩優しいですね。泊めて。に、すぐ OKとはちょっとびっくりです」

「だろ?まあ、今日も白い布見ちまったからな。そのお詫びだ」


――。


あれ?なんか今時間が少し止まった気がする……気のせい?……ではないな。


「……ちょっと待ってください。な、なんのことですか?」

「いや、古市と電話してる時に俺の前をぶらぶら歩いていただろ?その時に何度も見えてたぞ?風吹いてるし。俺座ってるんだから。視線が低いんだから気をつけろよ」

「……」

「どした?吉野」

「……ば……」

「ば?」


なんか吉野のがプルプルしてるな――とか思ったら。


「馬鹿先輩!変態!えっち!」


パッシーン!


…………葛久遠。後輩にビンタされました。それもめっちゃ綺麗にというか。かなりいい音が周りに響きましたとさ。


なぜだよ。

単にパンツ見えてたから気をつけろって、言いたかっただけなんだが……痛いなもう。この後輩力強すぎである。


ビンタから少しして―――。


「……先程はごめんなさい。手が出ました」

「容赦なしだよな。フルパワーだったろ。まだジンジンするぞ」

「……赤いですしね」


自分では見えないが絶対これ吉野の手形がくっきりと残っている感じだろう。うん。間違いない。


「あれだけしっかり叩かれたらな。マジ泣くわ」

「泣いてもいいですよ?」

「泣かないからな?ネタにされるだけだし」

「ネタにはしませんが……私は恥ずかしい思いをしましたから。まあ先輩の弱みを握れますそ」

「おい」


っかホントまだなんか叩かれた感覚がしっかり残っているが。まあ吉野は落ち着き。ちょっと距離を空けて。気持ちだけな。俺のとなりに再度座っている。


そして再度ボーっと空を見た。

うん。今日は月の灯りが弱いからか星が結構見える。まあゆっくりするにはちょうどいいか。一時期バタバタとちょっと騒いでいた気がするが……っか、ホントオバケちゃんパワー強いよ。まだヒリヒリだよ。


「で、吉野は大丈夫か?」

「え?」

「あれさ。周りからの視線。古市ですら言っていたからな。めっちゃ見られてコソコソ言われている気がします。とか」

「あ、あー、数日はなんかありましたが。大丈夫です」

「まあ学校来てるもんな。無理ならまた不登校だわな」

「……学校は先輩も居ますから」

「俺?古市じゃなくて?」

「はい、先輩といれば安全です」

「いやいや、俺クラス違うどころか。学年違って学校じゃ放課後くらいしか会わないよな?」

「でも入学してすぐに先輩の知り合いが居る。というのはなかなか大きな力ですよ?古市さんも言っていました」

「そんなものか。って、それも噂になっているのか?」

「はい。最近はちょくちょくと。私にちょっかいかけると先輩が乗り込んでくると」

「まてまて、乗り込まないからな?」

「それも古市さんがそう話してました」

「……あいつ。なにを勝手に……呼ぶなら讃大だけにしろよ。巻き込むなよ」

「まあ先輩も居るから。私はまだちゃんと居ます」

「次からは、吉野は怒らすと相手をボコボコにするって噂流しておいたらよくないか?」

「いやですよ。そんな噂やめてください」

「俺被害者」

「私が被害者です!また見られましたから」

「布じゃん」

「……もう1発—―」


そう言いながらこちらを向いてなんか手に力をこめようとしている方が――危険だ。


「待て待て、ストップ」

「記憶を消してください!」

「無茶言うな」

「なら殴ります。そうすれば記憶が飛ぶかもしれません」

「怖いから!っかそれ意識が飛ぶんだよ」


なんやかんやで星を見るより話している方が多かった気がする。


しばらくして屋上から降りてきたあとはホントに吉野はまた俺の家に居た。何回目だっけ?まあ……空き部屋は使われて喜んでいるだろうが――。


簡単にあるもの。冷食チンチンで夕食を済まし。現在は吉野が風呂。俺部屋でくつろいでいる。変に動くとだからな。って、なんで自分の家で自由に動けないか……まあ後輩のあらぬ姿見たらビンタじゃ済まないだろうからな。刺されて人生強制終了とかあるかもしれない。それはちょっとな……うん。


まあでもその日は無事にビンタもその他もなく。終わっていった。よかったよかった。


――。


ちなみに翌日朝は――。


「また寝顔見てた!」


と、オバケちゃんに騒がれましたとさ。大変大変。って、休日だが何回声をかけても起きてこなかった吉野も悪いと思うんだがね。


そんなにあの部屋寝心地いいのだろうか?毎回気持ちよさそうに熟睡しているが……うーん。わからん。

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