第7話 情報収集

 翌週。

 もちろん俺は高校に行くためにいつもの時間に起きて準備をして出発したのだが。まだマンションに居た。家からは出たのだが。また違和感を見つけてしまったからだ。何故か気が付いちゃったんだよな。うん。


「なんでここが……開いてるんだよ」


 まただった。

 今日は1階部分の非常階段へのドアが少し開いていた。いや今日はゴミを捨てて登校予定だったのでね。なのでちょっとゴミ置場に寄ったら。普段は閉まっているところが開いていると気になるんだよ。気になったんだよ。


 無視しても問題はないのだろうが。何故か。気になってしまった俺は非常階段へのドアを開けた。


 そして登っていくと、って、1階からは地味にきつかった。


 ちょっと息を切らして朝は来ることがほぼない屋上へのドアを開けると、風がふわっとこちらに流れ込んできた。

 午前中は風邪向きが違うらしい。いや、夜来ることが多いためな。

 これだけ明るい屋上というのはあまり見たことがなかったが。全体を見てもとくに変わらないな。一部のぞいて他は説明の必要はいらなさそうだ。


 なんでややこしい言い方を俺はしたのだろうか。まあいいか。とりあえず1ヶ所は説明が必要そうだ


「おはようさん。また来たのか?」

「……またこの前の人?」


 この前の女子生徒がまた屋上に立っていた。


「ああ確か前に言っただろ。俺ここの住人だからな。で、またたまたま朝ゴミ捨てに行ったら非常階段のドアが開いてたからな。ちょっと気になってな。あそこが空いていることとか今まで見たことなかったからな」

「——あー、ちゃんとドア閉めなかったかも」

「まあ非常階段のドアはちゃんと最後まで閉めないと閉まらないんだよ。このマンションのは。っかこの前は5階が開いてたが。もしかして同じ階の人だったりするのか?」

「えっ?私……前の時も1階からしか入ってないけど……?」

「えっ?」

「……」


 もしかして――この前の閉め忘れは、完全に俺が原因らしい。

 っか、この前会ったのはたまたま。偶然ということか。たまたま閉め忘れて少し開いていたドアに俺がたまたま気が付いて上に登った時にたまたまこいつも居た。まあ俺以外にも非常階段のドアを触る人は居るかもしれないが。設備点検とかで見ているかもしれないしな。まあでも偶然だった。ということはわかった。


 まあ過去のことはいいか。


 現在俺はまた同じ制服を着た女子生徒と自宅マンションの屋上で遭遇したのだった。っか今日も前髪でほぼ顔見えないから、明るいが普通に怖いんですが。って、風吹いたからちょっと表情見えたわ。また驚いた感じの表情をしていた。

 でもまあ驚くか。偶然とはいえ2回もこうやって屋上で会うとはな。


 っかそんなことより。俺が聞きたかったのは……。

 なんで朝っぱらからこのマンションの屋上にこの女子生徒が居るかだ。


「っか朝からなんでこんなところにいるんだ?ここの住人じゃ……ないんだよな?」

「……」

「——無視されたか」

「……」

「再度無視っと」


 どうやらそれに関しては言う気は無いらしい。返事が帰って来る気配がなかった。


 っか、ちょっと余計なことをしていたからか。ふと時間を確認したらすでに授業始まっている時間だった。うん。まあそれは別にいいのだが。多分俺が居ないと1人が騒いでいるかもしれないが。その他はとくに問題無いだろう。


「おまえ学校は?ちなみにもう始まってるぞ」

「……サボる予定です」


 この質問は答えてくれるらしい。普通に返事が返ってきた。


「はっきりサボる言ったな」

「……学校……行きたくないですから」

「の割にはちゃんと制服着てるよな?この前も来てなかったか?」


 俺は言いながら再度女子生徒の服装を確認する。やっぱり俺の通う学校の制服だ。っか。こんな学生が居たら目立つというか。同じ学年なら印象に残ってそうだから、やはり違う学年か。


「行くふりが……必要なので」

「……行くふり。なるほど親か」

「そうです。って、私は何をベラベラと……」

「だな。ちなみ話したついでに自己紹介しとくわ。俺は葛久遠。お前の制服から見て同じ学校で2年」

「2年……くず?」

「葛が苗字な……いじめやすそうだろ?」


 言ってから気がついた。俺も余計なこと言った。

 いやまあ過去にあったことだが。最近はネタ?というのか。使えるまでになったということか。俺成長したらしい。ってホント余計なこと言ったわ。

っかいきなり自己紹介したが。相手が答えてくれる可能性は――どれくらいだろうか。もしかしたら無視もあるかもと思ったのだが。


「い、いえ……って、先輩だった……わ、私は吉野よしのです……1年。です」


 この質問も答えてくれる質問だったらしい。ちょっと慌てながら?答えてくれた。


「吉野か。っか1年からサボってると留年とかにならないか?」

「……あまり気には」

「気にしろよ。っかもしかして前もサボり?」

「……まあ」


 なんかサボりの常習犯と出会ってしまったらしい。


「……」

「……」


 そして会話が切れた。自己紹介なんてあっていう間に終わった。ということで変な間が続くのもなので……。


「……まあえっと……俺は学校行くわ」


 逃走を選ぶことにした俺だった。


「……はい」

「行きたくないなら無理する必要ないからな。じゃ」

「……」


 完全に遅刻だが。俺は学校に向かって移動することにした。

ちなみに吉野とやらはまだ屋上に残るらしい。


 俺は急いで。ということはないが。普通に学校に向かったそしてちょうど1限の終わりくらいに学校には着いた。


 ちょっとクラスの注目を浴びてしまったが仕方ない。

 休み時間に入ればよかったんだがな。下駄箱やらに居る方が他の先生に見つかってややこしいことに、とか思ったので教室へと向かう選択をした俺だった。


 そして次の休み時間になると、讃大がすぐにやってきた。


「久遠。今日は寝坊か?」


 監視人は、調査も早い。ホントすぐに来たよ。このお方だった。


「いや、ちょっと後輩とな」

「後輩?楓華とか?」


 どうやら讃大の中では俺が言う後輩は古市しかいないらしい。まあ実際そうか。古市しか俺名前知っている奴居ないもんな。


「いや、違う」

「楓華以外の後輩か?驚きだな」


 おいおい。まるでお前後輩に知り合いいたのか?みたいな顔しているが……って驚きって言ってたわ。

 まあ俺も一応後輩に知り合いいるからな?今お前が名前を出した古市とか……古市——とか。あれ?1人しか居ないわ。

 あっ、さっきの吉野は――話に出すとややこしくなりそうだから伏せるか。


「まあそういうことだ。で、ちょっといろいろあって出発が遅れた」

「まあならいいが」


 そう言いながら俺の肩を叩く讃大。


「……心配し過ぎだろ」

「久遠は謎な行動するからな」


 讃大は笑いながら何故か肩をバシバシと。っかこいつ、なんでこんなに楽しそうに話すのだろうか。実は再度俺に飛んでほしいのだろうか。ってそれはないか。周りにクラスのやつもいるから雰囲気をだろな。


 この時の休み時間は讃大とそんな話をした。

 そして短い休み時間はあっという間に過ぎて。その後の授業は普通に受けた俺。そして放課後。


 俺はまた讃大とともに生徒会室に居た。

 正確に言うと、放課後になる。即確保された。である。

 まあそんな感じで今日も生徒会室へと連れてこられたのだった。

 でも今日はどっちにしろ副会長に用事があったから、どのみちここに来ていただろうがな。


 作業を開始してしばらく。俺は副会長。古市に話しかけた。


「あのさ。古市?」

「へっ?あ、はい。なんですか?葛先輩」


 急に話しかけて悪い。なんかびっくりさせたよな。悪いと心の中で言いつつ。


「ちょっと聞きたいんだけど。吉野っていう生徒知っているか?」

「吉野——あっ。オバ……じゃなくて夜空ちゃんですか?」


 ……古市よ?今なんか言いかけなかったかい?とちょっと俺は疑問に思いつつ……。


「多分そうだろうな。吉野って苗字は複数いるのか?」

「いえ、確か学年に1人だけだったかと思いますけど」

「じゃその吉野——夜空?で間違いないか」

「って、えっ?葛先輩。夜空ちゃんと知り合いですか?」

「えっ?いや――ま、まあ、そんな感じ?だな」

「なら。葛先輩。私からもいいですか?」


 急に古市が食いついた感じになった。興味ありって感じだな。

ってあれ?俺があの屋上に居たやつの情報収集をちょっとしようと思ったのだが。なんか逆になりそうな雰囲気だな。


「うん?」

「夜空ちゃん少し前から学校休んでいるんですよ。なんでか知りませんか?」

「……さあ?理由はわからないが。まあ外には出てるな」


 制服を着て外には出ているぞ。


「はい?えっと……風邪とかではないと」

「だな。多分元気そうだった」


 古市と話していると生徒会室に讃大の声が響いた。


「はいはい。2人とも手が止まってる止まってる」

「やりますよ。ってやってますよ。休憩もないとかどんだけブラックな職場だよ」

「讃大先輩。ごめんなさーい」


 讃大に声をかけられ俺と古市さんは作業再開する。


 作業しつつ俺は、とりあえず吉野はこの学校の生徒で確定。制服着てたから確定していたが。念のためみたいな。あと古市と接点あり。というのはわかった。


 その後はまた古市に質問すると、讃大に何か言われそうだったので、なんで吉野とやらはうちのマンションに来ていたのだろうか?などを考えつつ俺は作業を続けたのだった。


 作業中に『確かマンションには吉野という苗字は……』とか俺は考えつつ。もしかしたら最近引っ越してきた。とかなら俺が知らない可能性もあるが。そもそも違う階の人は顔は見たら――まあわかるかもしれないが。あまり自信はないな。

 そんなに他の人と会う事ってないからな。ごみ捨てとか――ちょっとマンション内ですれ違ったりとかそんなレベルだし。

 だから、マンション内の苗字は。わからないな。ポストとか見ればわかるかもだが。それは不審者に間違われそうだからな。うん。それに吉野とやらはマンションに住んでいる感じではなかったしな。などといろいろ考えつつ作業をしていた。


 ちなみにその日の生徒会の作業はちょっとした会話があったからか。

 前よりも作業効率が悪かったかと思う。なのでまた明日も生徒会室決定だなこれは。紙の山が減ってない。っか、作業量と人員が全く合ってない。これは間違いない。バカの俺でもわかる。バランスがおかしい。たった3人でするような作業量ではない。うん。間違いない。


 って、まだ今日は終わっていない。


 片付けをしていると普段はすぐ讃大に話しかける古市が俺の横にやってきて話しかけてきたのだった。


「あの葛先輩。今大丈夫ですか?」

「なんだ?」


 作業が終わると古市が話しかけてきた。

珍しいなと俺は思いつつ古市の方を見た。


「先程の話ですが。葛先輩は夜空ちゃんと知り合いなんですよね?」

「まあちょっとだが――知り合ったの最近だし」

「夜空ちゃん元気なんですか?」

「元気か聞かれてもな……まあ、普通だと思うが。ってちょっとしか話したことないからそこまではわからんな。っか、さっきさ。オバなんとか言いかけたあれなんだ?」

「あっ、それは……」


 俺の勘ではおバカちゃん?ってそれはないか。あとは、おばちゃんも無いだろう。なのであれは――なんだ?と。思っていたのだが。気になっていたから聞いてみた。わからないままだとモヤモヤするからな。


「それは?」

「その夜空ちゃんクラスでは――オバケちゃん。と、一部の子から呼ばれてまして、あっ、私はその言って……なくは。話を合わせるというのか。雑談とかでは……でも私はその使いたくはないんですよ。でもその……」

「なんとなくわかった。クラスのグループとかそんなんだろ?古市も大変だな」

「そんな感じです」

「で、オバケちゃん?」

「あっ、その夜空ちゃん見た目が――先輩夜空ちゃん知っているみたいなのでわかると思いますが。あれですから」


 古市が言いにくそうに言っているが。まあ思い出してみると。納得。


「あー、なるほど。確かに始めて見たときホラーだったわ」

「そういうことです。だから、ちょっと一部の生徒からからかわれていた。と、いいますか。それが今クラスに広まっているといいますか。ブームという言い方はおかしいと思いますが。なんかそういう順番が夜空ちゃんにという感じで」

「はいはい。なるほど、だから古市も周りに合わせるためにオバケちゃんとたまに呼んでいると」

「……言いたくはないのですが。その……」

「まあ仕方ない。クラスの雰囲気が。だからな。輪に入らないと。って時もあるし。じゃ、吉野は不登校なのか?ってまあ家の人には学校行ってるみたいに装っているみたいなこと言ってたしな」

「葛先輩。夜空ちゃんのこと結構詳しく知ってませんか?」

「——まあ、本人から聞いただけなんだが」

「あっ葛先輩。もし夜空ちゃんとまた会ったら、私が心配していた。と伝えてください」

「吉野は――スマホとか持ってないのか?」

「そういうような事を聞く機会がまだなくて、連絡先もまだ知らないので……」

「っか、吉野に古市からって言ったら通じるんだろうな?」


 伝言の場合これ大切と俺が思いながら聞いてみる。いやもし会って伝言言ってそれ誰?とかになったら――だからな。


「あー……うーん。何回かはちょっとですが話したことあるんですが……最近は夜空ちゃん登校してきてなかったので……でも覚えてくれているかと」

「まあわかった。とりあえずもし会ったら言っとくよ」

「お願いします……って、あれ?讃大先輩は?」


 古市が生徒会室内をキョロキョロ見ている。


「今さっき部屋から出て行った」

「なっ!?あ、じゃ葛先輩お疲れ様でした」


 俺が事実を伝えると、古市はクルッと向きを変え小走りで讃大の後を追っていった。


「あ、ああ。って、古市!ここの鍵。生徒会室の鍵」

「あー、葛先輩職員室までお願いします!」


 そう言いながら古市は一度止まってこちらを見たが。すぐに讃大を小走りで追いかけていった。好きだね。古市も讃大のことを。って、俺生徒会役員じゃないんだが。鍵返しに言って怪しまれないよな?とか思いつつ机の上に置かれていた生徒会室の鍵を持った俺だった。


 ◆


 まあ結果から言えば。普通に鍵は返せた。


 そして、鍵を返しに職員室へと来た際にまさかの人物をそこで見つけたのだった。


「……吉野?」

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