第2話 立ち入り禁止
コツコツ……。
静かに歩いていても小さな足音は聞こえた。
自宅マンションの非常階段を上がって行くと、当たり前といえば当たり前のことだが終わりがある。
このマンションの非常階段最上部には屋上へ出るためのドアがある。
通常は屋上には行けないため立ち入り禁止の文字が書かれている。
まあ書かれているだけだがな。ちなみにこのマンションの屋上へのドアは鍵とかは付いていない。
コツコツ……。
非常階段とは普段——通常時とかいうのか?まあ普段は使わないはずだが。
現在の俺はその非常階段を上がり。立ち入り禁止と書かれているドアノブを回して屋上へのドアを開けた。
ギィィ……。
屋上へのドアは開くことがあまりないからか。ちょっと開きにくい。
っか、ドアがめっちゃ重い。錆びついているのか?地味に小学生の身体にはきつい。いや俺が弱っちいだけかもしれないが。ってまあ頑張ってドアを動かすと。なんかバラバラとサビ?が落ちているような。ってまあ気のせいか。ホコリとかかな?
ってまあ実は何回かここのドアを俺は開けたことがあるのだが……まあ毎回こんな感じだ。何かがパラパラと剝がれている。
太陽の日差しとかがあって明るければな。よく見たらわかるかもだが。今は暗いので、何かはわからない。まあ別にいいだろう。
そんなドアを開けると屋上へと出る。とくに物はなく。アンテナ?と思われるものが屋上の真ん中くらいにポツンと立っているだけ。
あとは、ぐるっと周りを見渡して見ると……とくに柵などはなく。あれはなんていうのだろうか。30センチくらいの……実はあれが柵?ではないか。
簡単に乗り越えられるからな。柵とはいえないかな?
まあとりあえずちょっとした段差が屋上の淵にあるだけだ。
この俺の住んでいるマンションの屋上はそんな場所である。
コツコツ……。
現在時間は多分深夜。月がとってもきれいな月夜だ。外に出てみると少しだが地面が照らされて明るいからな。
コツコツ……。
普通はこんな時間に屋上にやってくる事はそうはないと思うが。って、家から出ることもまずない時間か。が、この時の俺は屋上に立っていた。
この日は部屋の窓からたまたま見えた月がとっても綺麗で……と言えばいいのか。でも違うな。俺は月を見にここに来ただけではなかった。
コツ……。
「……よいしょ」
この程度の段差は俺でも簡単に上がれた――。
……ガサッ……ドサッ。
◆
これはほぼ同時刻の同じ場所での事。
ブーンブーン。
……ババンッ。バン。
カチャッ……バン。
1人の男性が車から降りた。
「……お前運転粗すぎだろ。乗っている方の身にもなれよ。まあ送ってもらってだが」
「そうか?普通に運転してきたぞ?」
「まあサンキュ」
「OKOK。こっちもとっとと帰るよ遅くなったからな」
「……」
「っかあの運転はいつか捕まるな。道路交通法なんやらで……じゃ気を付けて……な?」
「うん?どうした?なんで急に立ち止まったんだ?家の鍵でも無くしたか?やめろよ?こんなところで家は居れなかったから泊めろとか」
「ぉ。ぉぃ……」
一人の男性はとある物を見てしまった。
「……うん?どうしたの?」
「お前……なんで急にそんなおびえた声出すんだよ。オバケか?いるわけねーだろ?ガキかよ。って起きちまったか。悪いな。馬鹿がよ。なんかそとで騒いでてな。寝てていいぞ」
車内。運転席に居たもう一人の男性は後部座席に声をかけた。すると……。
「ぉ……おま、あれ見ろよ」
「……あっ」
「はっ?なんだよさっきから。あれ?どれ…………なっ……だ、誰か!救急車!救急車呼べ!って俺がかければいいのか!」
車の運転席に乗っていた男性が慌ててカバンからスマホを取り出した。
「だよ!おま!ちょ、早く救急車!」
「……」
これがほぼ同時刻の同じ場所での出来事。
でも俺は知らないこと。
◆
……ピーポーピーポー。ピーポーピーポー。
それから数時間後。俺は市内にある病院のベッドに居た。何故病院に居るのかがわからない。
予定。予想では病院に居るはずではなかったのだが……あの高さだったからな。
まあ俺は眼が覚めるととにかく。とにかく。身体中が痛い。馬鹿みたいに痛い。病院なら痛み止めくれ!って感じか。なんか腕は包帯でぐるぐる巻……き。っか。ほとんど見える範囲全て包帯ぐるぐる巻きだった。
しばらくして、病院へとやって来た親からはめちゃくちゃ。ホントめちゃくちゃ俺は怒られた。
……どうやら親や看護師さんの話しを聞いていると。
昨晩俺は自分の部屋の窓から落ちた。転落。したが奇跡的に真下にあった木がクッションになり助かった。ということになっているらしい。
俺のぼんやりとある記憶とはちょっと違うかな?
まあその時の俺は訂正をする気はなかったが……面倒だし。っかこの予想はなかったことだからな。
ちなみに誰かが救急車を呼んでくれたらしいが……その人は不明らしい。
まあそういえばだが……あの時。部屋の窓を開けていたかもしれない。なんか起きた時に部屋の窓を開けたような気がする。うん。ぼんやりとした記憶だが……。
あとあの時。真下の事は全く気にしていなかったが。たまたま木があるところだったのか。ちょっと下見不足だったのかもしれない。
っかあそこ自分の部屋の真上だったのか。それも知らなかった。と、ボーっと病室の天井を見つつ思っていた俺だった。
これは俺が小学6年生の時の話。
まあいろいろあって誰にも言えず。ぶっ壊れたか。何を思ったのか。人って飛べるかな?とかを実践した日の事だ。
……にしてもホント信じられないくらい身体中が痛かった。
先生!勝手にしたことだけど。今は痛いから何とかしてくれ!と心の中では叫び続けていた。マジで痛かったからな。でも誰かが居る時は特に普通にしていた俺だった。
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