ちょっと空を飛んでみたい人が集まっただけです ~1人だけすでに経験済み~

くすのきさくら

第1話 過去

 多分あの時は心が疲れ切っていたんだろう。

 あんなことをした理由はもうはっきりとは覚えてないが。

 今誰かにあの時の事を言うのなら……。


 ◆


 人って鳥みたいには飛べないんだよ。一瞬。一瞬だけフワッとしたら。そのまま落ちるだけなんだよ。そして高さとかいろいろな理由とか状況があると思うが。たとえ低くても打ちどころが悪いと。


 でもね……飛びたくなる時があるんだよ。

 毎日が楽しくない。

 何をしても……っていう時があるんだよ。


 俺はそんな時があった。で、飛んでみたけど。


 やっぱり人は飛べなかった。まあ人が飛べるかの実験とかではなかったんだがな。最期くらいちょっと。というのか……。

 ほんとなんであんな行動になったんだろうな。もう今じゃわかんないわ。ってか。あまり覚えてない。という。

 それだけあの時は疲れていたんだろうな。


 ◆


 とまあ、飛んだ飛んだと言っているが……。

 誰からかとかは、わからないが。人が飛べないということを伝えろ……とは言われてないのだがね。うん。言われてないぞ?俺は選ばれた人間とかじゃないからな。

 でも、もしかしたら誰かのそんな思いがあったのか。

 あの時の俺は奇跡的に不時着してしまった。


 なので、今ここにこうして居る。生きている。こうやって話している。

 そして飛んでみた。という経験済みの証とかいうのか。

 片腕と背中前面に大きな大ききな傷跡を持った俺。

 くず久遠くおんが居るのだった。


 これはまだ始まりまでの話だ。

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