第12話 たまゆら

耳から咲いたうつくしい花の声たち

眠っているときだけ、咲く花がある

あなたはそれを観る事はないだろう


生きた証し、誰かの

言葉に耳を傾けた証し

母さんの声は咲いているか

愛しいあの娘の声は


知らない人の知らない花も咲いている

家族の親しい声も、忘れさられた声も

等しく咲いて花弁は散り朝の陽に濡れる前に

枯れていく、花弁を一枚口に含めば


あなたの事がもっとわかるだろうか


耳を傾けてあなたの声が咲くのをみたい

けど誰も自分の耳に咲く花を観る事はない

仰向けで手を組むあなたの耳を見つめて


いる、過去と現在を行きつ戻りつ、揺れる声たち

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