征夷大将軍カール・YA・ベルンシュタイン④

1.同盟締結


「……う、うちのクロスが申し訳ありませぬ」


 顔を真っ赤にした元康が小さな体をぷるぷる震わせながら搾り出すように謝罪を口にする。

 何と言うかもう……いと哀れ。


「いや、俺の方こそダチがすまん……」


 俺のことやべー奴とか言ったけど、クロスのがよっぽどやべーよ。

 全方位隙のない不審者じゃねえか。

 よし、とりあえずクロスは置いといて話を続けよう。


「…………庵、お前の覚悟は受け取った。二人に事情を説明してやってくれ」

「え、この空気で話すんですか?」

「この空気を換えるためにも、だ」

「わ、分かりました。あの、えっと。織田様、松平様。私は櫛灘庵と申します」

「あ、ああ……おれのことは信長で構わんよ」

「……竹千代も竹千代と呼んで頂いて構いませんので」

「そ、そうですか」


 くっそ、何かすっげえ気まずいぞ。

 ホントもうロクなことしねえなクロス。

 こんなのと親友やってるという事実に俺は今、軽く泣きそうだよ。


「ゴホン! では、改めてお話させて頂きます。我が一族とこの国の真実について」


 そうして庵は静かに語り始めた。

 葦原が成立するまでの歴史を。非業を背負わされた一族のことを。俺が何をやろうとしているのかを。

 二人は黙って耳を傾けていたが、話が進むにつれその表情はドンドン険しいものになっていった。


「……――女のために何をも巻き込むか」


 語り終え、しばしの沈黙の後、信長がポツリと漏らした。


「おうさ。何をも巻き込んで八俣遠呂智を殺すとも」


 そのために俺はこの国へやって来たのだから。

 天下を統一し、皆を率いて八俣遠呂智に挑み――勝つ。

 この方針を曲げるつもりはない。


「何の関わりもない異人が余計なことをと思う奴も居るだろう。だがそりゃ大間違いだ。大いに関係があるぜ。

何せ庵は将来、俺の子を産むんだ。その子が葦原のために犠牲を強いられるかもしれない未来を見過ごせってか? 笑えない冗談だ」


 まあ子供と、孫ぐらいまでは俺も守ってやれる。

 国が相手だろうと――いやさ、世界が相手だろうと敵に回すことに躊躇いはない。

 だが俺の死後はどうだ? よしんば子と孫が幸福の内に天寿を全うとしたとしてもその先は?


「帝国に来た守人の一族は庵の意思なんか関係なく、子を孕ませ産んだ後は庵を生贄に捧げる気だった」


 ふざけろ。殺すぞ。いや殺したけど。


「そんな連中がこの先も現れないって保障はどこにある?

例え守人の一族を殲滅して情報を隠蔽したとしても、それは完全か?

何らかの手段で情報が別の誰かに渡ればそいつが俺の子孫を狙うだろうよ」


 そんな未来は認められない。


「大を生かすための犠牲になれって? 馬鹿馬鹿しい。そりゃお前らの理屈だろ。俺には関係ない。

犠牲になる側の人間にそんなふざけた理屈が通用するとでも思ってんのか? ああ? だとしたらそいつは相当おめでてえ奴だよ。

自分のカミさんだろうが娘だろうが犬のように差し出すんだろうな。心底軽蔑するが好きにすりゃ良い。だが俺は嫌だ」


 俺の女も、その子も孫も誰一人として犠牲にはしない。


「そのためなら戦火を広げ、無辜の民草が血を流すことも厭わないと」

「ああ。でも、当たり前のことだろ? 結果論だが葦原に住まう人間は皆、櫛灘の女達によって生かされて来たんだ」


 自分では何の努力もせずにな。そのツケを払う時がやって来たのだ。

 そんなことは知らなかったと言うならそれでも良いし、気に入らないなら俺を殺せば良い。

 それは当然の権利だからな。


「俺の道を阻まんと敵になるならどうぞ御自由に。自分の守りたいものを守るために戦えば良い。俺は否定しない」


 肯定し、その上で叩き潰すだけだ。


「何もしないなら何もしないで良い。ただそれは権利と責任の放棄だ」


 俺にも、俺から大切なものを守るために立ち上がった誰かにも、文句を言う権利はない。

 自分から権利と責任を捨てたんだからな。黙って全てを受け入れろ。


「…………誰もがそんなに強いわけではありませぬ」


 苦渋に満ちた表情で元康は搾り出すように言った。


「つまりお前は俺の女やその子に葦原のため犠牲になれと言うわけだ」

「そうは言っていません! そんな風に白か黒かと綺麗に割り切れるほど人間は単純ではないと申しているのです!!」

「それでも決断しなければいけない時は必ずやって来るぞ。そこから目を逸らしてどうしようってんだ」

「だとしても……だとしても、竹千代は答えを出せぬことを悪だとは思いたくありません」


 元康は俺の視線を真っ向から受け止め、答えた。

 なるほど、


「悪かった」


 コイツは信頼出来る人間だ。

 世界は違えども徳川家康ってだけはある。


「ぇ……は?」

「意地悪な言い方をした。そうだな、お前の言う通りだよ」


 例えどちらかを選ばなくてはいけないとしても、選べない人間は居る。

 その通りだ。そしてそれは仕方のないことだ。


「何も選べないならどんな結末をも受け入れろという言を曲げるつもりはない」


 これまで語ったことは嘘偽りのない本音だ。

 だが、選べぬことそれ自体を責めるつもりはない。


「つか、そもそも俺は別に悪いとも正しくないとも言ってないぜ? 個人的な好き嫌いは口にしたがな」

「あ……それは、そう、ですね」

「まあわざとそう聞こえるように言った部分はあるけどな」


 何のために? 信長と元康を試すためだ。

 そして、二人は見事にそれぞれ違う形で応えて見せた。


「元康。お前は最終的に決断出来る側の人間だ」

「そんなことは……」

「あるよ。信長、お前さんはどう思う?」

「選べるであろうよ、竹千代ならばな」

「だってよ。少なくとも俺と信長はお前が言うところの強い人間だと思ってる」


 にも関わらずだ。

 元康は選べない者達の視線に立って真っ向から俺に噛み付いた。

 選べぬことは決して悪ではないのだと。

 自己保身のためではない。弱者を慮ってその背に庇ったのだ。


「お前さんは良い為政者だ」

「……甘いと謗られてもしょうがないと思いますが」

「非情だけが為政者の資質か? そりゃ違うだろ」


 為政者ってのはそんなに単純なものではない。

 民を導く以上、時には非情な決断もしなければいけない。そんな為政者にとって甘さは心を蝕む毒だ。

 しかし、だからと言って甘さを捨て冷酷になれば良いのかと言えばそれは違う。

 そんな奴に誰が着いて行きたいと思う?

 甘さという毒を呑んでも尚、折れず腐らず前に進める者をこそ俺は信じたいね。


「元康、俺と手を組め。俺はお前が欲しい」

「…………それは」


 迷いが見て取れる。まあ当然だな。


「お前にとっても悪い話じゃねえ。いざって時、俺を討つなら最初から敵対してるより内側に居た方が幾らか勝率を上げられるぜ」

「……その通りかもしれません。しかし、殿下に利はあるのですか?」

「ある」


 今、元康は計りかねている。

 俺が松平にとって――否、この国にとって良い影響を齎すか悪い影響を齎すか。

 もし後者だと判断したのなら命を賭して俺を討とうとするだろう。

 庵や歴代の櫛灘の姫君らを憐れに思いながらも苦渋の決断を下せる。

 だが、前者ならどうだ?


「俺が葦原に真なる夜明けを齎す存在だと判断すりゃ、その時は命を賭して共に戦ってくれるだろう」


 信を勝ち取ることが出来なければ厄介な敵になる。

 だが信を勝ち取ることが出来れば心強い味方になってくれる。

 元康を懐に招き入れるだけの価値は十分にあろうさ。


「俺は己の行動で以ってお前の信を勝ち取ろう。だからお前も傍で俺を見極めれば良い」

「――――」


 しばしの熟考の末、元康は小さく頷いた。

 未だ迷いも戸惑いも見えるが、同時に確かな意思の光がその瞳に宿っていた。


「御受けしましょう。殿下が天下を統一し、皆を率いて神に挑むに足る器かどうか――見定めさせて頂きます」

「おう、存分に見極めてくれ」

「はい。願わくば、殿下が真に主と仰ぐ御方であらんことを」


 嬉しいことを言ってくれる。


「……おれと盟を結びたいと言っておきながら、真っ先に竹千代を口説くとはな」


 黙って成り行きを見守っていた信長が拗ねたようにぼやく。

 だが俺からすれば何を、って感じだ。


「いやだって……お前、もう腹は決まってるだろ?」


 元康は選べぬ弱者の側に立ち、俺に噛み付くことで信を得た。

 では信長は? ――――目だ。

 俺の話を聞き終えた時、表面上は冷静ながらその瞳には隠し切れない憤怒が見えた。

 信長は八俣遠呂智を許容しない。八俣遠呂智に縛られた国を、人を、決して認めない。

 自分が感じていた息苦しさの元凶を生かしておくつもりは毛頭ない。

 だがそれは決して義憤などではない。


「分かるよ。俺ら、わりと似た者同士だもん」


 俺も信長も、どこまで行っても私情の人間なのだ。


「……かなわんな。ああ、その通りだ。八俣遠呂智は殺す。これは決定事項だ」

「だったら俺らには手を結ぶ以外の選択肢はない――だろ?」

「その通りだ」


 何だかおかしくなって、俺達は思わず噴出してしまった。

 そうしてひとしきり笑い合った後、もう良い時間なので庵に戻らせ改めて二人に向き直る。


「ここに盟は成った。実務的な話に移りたいと思うが……大丈夫か?」

「おう。おれとしても細かな方針は知っておきたいからな」

「竹千代も問題はありませぬ」

「ありがとよ」


 ってかクロスが未だに目を覚まさないんだが……まあ良いか。

 目覚めたら目覚めたで面倒だし。


「お前らには将軍の名代として天下統一に向け動いてもらうが、細かな口出しをするつもりはない」

「好きにやって良いと?」

「おう。だって俺、戦争については素人だし。下手に口出ししても良いことないじゃん」


 俺を含めて好きに使ってもらうのが一番だろう。


「ただ、口は出さないが支援はさせてもらう――幽羅!!」


 名を呼ぶや空間が歪み、幽羅が姿を現す。

 どこかで聞いているだろうとは思ってたが、案の定だよ。


「あれを」

「はいな」


 幽羅が軽く手を振るうと山のような金塊が出現し謁見の間の半分ほどを埋め尽くした。

 これには流石の信長も驚いたのか、目を白黒させている。元康に至っては目も口もかっ開いて固まっている。


「これを半分ずつお前らに渡すから好きに使ってくれ」

「……ありがたいが……一旦、国許に戻って人を呼んで来なければこの量は運べんぞ」

「運搬については安心してくれ。幽羅が何とかする」

「ホンマ、人を便利に使いはるわぁ」

「良いだろ別に。ほら、何か巻物か何かに封じ込めて召喚出来るようにしてくれよ」

「簡単に言いますけど、それかなり高等な術なん分かってます?」

「出来ないの?」

「いや、出来ますけどぉ」

「じゃあやれよ」


 腑に落ちないといった顔のまま幽羅が再度、手を振る。金塊の山が半分消え、一枚の巻物に変わる。

 再度手を振るともう半分も。信長が凄い目で幽羅を見ているのは……多分、戦争に使えそうだと思ったからだろう。


「言うときますけど、織田の御家で雇っとる術師程度じゃ出来ませんよ?」

「……そうか」


 残念そうだ。


「おい元康」

「…………ハッ!? も、申し訳ありませぬ。その……当家は貧乏なものでして……あの、本当にこれを……?」

「これで信を買うとかそういうつもりはねえから安心して受け取りな」


 そもそもの話、貧乏だと戦力的にお辛いものがあるしな。

 元々かなり稼いでる織田は良いよ。

 でも松平はな。栄えて貰わないと戦争出来ねえじゃん。


「足りなくなったらまた言ってくれ。その都度仕送りすっから」


 田舎の母ちゃんの如くな。

 まあ前世も今世も母親に仕送りしてもらった経験はないけどな。


「まだあるのですか!?」

「おう。葦原に来る前、世界中からかき集めたからな。資金は潤沢だぜ~?」


 まあ幾らか使いはしたが、それでもまだまだ余裕はある。

 廃棄大陸とそこに住まうモンスター達には感謝の言葉しかない。

 殺せば殺すだけ経験値と金になってくれるとか……RPGかよ。


「で、次はコイツだ。幽羅!」

「はいはい」


 指を鳴らすと俺の前にマスケット銃一式が出現する。

 以前、アンヘルに拳銃を作らせたがアレは単価が高いからな。

 うろ覚えの知識と拳銃を製作した際の設計図を下にゾルタンお抱えの職人に作らせた結果、マスケット銃が出来上がったのだ。

 しかもフリントロック。戦国時代にはまだ生まれてなかったが……まあ異世界だし問題はなかろう。


「何だそれは?」

「まあ見てな」


 弾と火薬をまとめて装填出来るようにした専用の弾薬包を押し込み、撃鉄を軽く起こす。

 蓋を開けて点火薬を詰めて――いやこれ糞面倒だな。

 近代兵器の便利さを知る身としては実にかったるい。


「……これでよし」


 銃を構え、幽羅が用意した的(甲冑)に銃口を向ける。

 別に片手で雑に撃っても当てられるんだが、ちゃんとしたやり方を見せないと悪い手本になっちまうからな。


「あ、これ防音大丈夫?」

「御心配なく」

「なら何の問題もねえやな」


 引き金を引くと同時に轟音が響き渡り、弾丸は寸分の狂いもなく心臓をぶち抜いた。


「音……これ、音……! それに煙! 臭い! 殿下、そういうことをするなら最初に言ってください!!」

「悪い悪い。で、どうよ?」

「……そう、ですね。確かに威力には目を見張るものがありますが……音と煙、それに攻撃するまでの手間が問題かと」


 これではどこから撃って来るかが丸分かり。

 弓の方が良いのでは? と元康は指摘する。

 予想通りの感想だ。現代人である俺は銃の利点をようく理解しているが、元康はそうじゃない。

 初めて見る兵器を正確に評価出来るわけがない――ま、信長は違うみたいだが。


「……違う」

「信長殿?」

「違う、違うぞ元康。これは“音と煙”があるから良いんだ。ちょっとの手間なぞ帳消しに出来るほどにな」


 呆然としていた信長が興奮に身体を震わせている。

 世界は違えども同じ名。やはり惹かれ合うものなのかもしれない。


「……カールは事もなげに当てて見せたが実際のところ、そう簡単には当てられんだろう。

となると槍衾のように数を揃えてというのが正しい運用方法と見た――違うか?」


 その通りだ。

 練習すれば射撃精度は上がるだろうが、それでも限界はある。

 射撃ってのはセンスの世界だからな。百発百中させようと思えばどうしたって才覚は必要になる。

 だから数を揃える。下手な鉄砲数撃ちゃ当たる――正に諺通りだな。


「今の音が何百、何千と重なればどうなる? 訓練された騎馬でも機能不全に陥ることは容易に想像出来ないか?」

「あ、なるほど。でも……」

「元康、元康よ。今のおれの説明を聞いてもまだ気付かんか? コイツの真価に……!!」


 難しいんじゃない? 銃を知ってる俺には分かり易いヒントに思えるけど元康からしたらそうでもないだろ。


「想像しろ。この武器が槍衾のように敷き詰められている光景を。そいつが密集する自軍に放たれる光景を」

「――――!」

「気付いたか。そう、コイツの真価は恐怖だ。二射目で理解する。あの音と煙が上がると味方が死ぬとな」


 現代でもそうだ。

 銃声を聞いて恐怖に縛られない人間はそうそう居ない。

 訓練された軍人ならば動けはするだろう。殺されぬために殺そうと戦えるだろう。

 だが耳にこびり付く銃声は心理的な圧となって精神を削る。


「それに数を揃えて使うなら訓練も容易い。それこそ百姓でも……殺意なく人を……命を断つ感触も伝わらんし……」


 爛々と目を輝かせぶつぶつ呟く様は端的に言ってやべー奴だ。


「あぁ――――何て、何て“悪い”武器だコイツは! 神仏に唾するが如き悪辣さよ!!

カール、カール! この武器の名は!? 異国ではこんなものが戦に使われておるのか!?」


「名前は鉄砲。そして安心しろ。これは俺が開発した最新鋭の兵器で何処の国にも流れてねえよ」

「そうか! そうかぁ! 鉄砲かぁ! な、なあ……ちょ、ちょっと貸してくれよ!!」

「分かった分かった。ほら、これ説明書。危ないからしっかり読んでな」


 この分だと話になりそうにない。

 落ち着くまで好きにさせてやろう。


(しかし……不思議なもんだ)


 キャッキャする信長とそれに付き合わされている元康を横目に考える。

 以前も思ったが、何故この世界で銃が開発されていないのか。

 以前アンヘルに作らせた拳銃は魔法技術との併用だからアレだがマスケットに関してはそうじゃない。

 量産には魔法を使ったが最初の一丁は純粋な加工技術によるものだ。

 俺のあやふやな知識で示した方向性で、あっさりと作れてしまったんだぞ?

 だったらとうの昔に誰かが開発しててもおかしくはないはずなのに……なーんか不自然なんだよなあ。


「ふぅ……やばい、これ。ほんと、やばい」

「信長殿、語彙がやばいことになっておりまする」


 お、多少は落ち着いたかな?


「そろそろ続き、良いかー?」

「あ、申し訳ありません」

「む……すまん。少々はしゃいでしもうたわ」


 少々……? いやまあ良いけどさ。


「銃の現物も大量に用意してあるが設計図や必要な金型、火薬もある程度は提供するつもりだ」

「足りないと思ったら自分で用意しろってことだな? 相分かった」

「ああ」

「しかし殿下、これは殿下の国で作らせたものでしょう? 葦原の鍛冶師に再現は出来るのですか?」

「そこら辺も抜かりはねえよ」


 秘密裏に久秀お抱えの鍛冶師に作らせてみたが問題なく再現出来た。

 初めて作るものだから多少、質は落ちてしまったが慣れれば大丈夫だろう。


「運用や維持管理の手引書も用意したからしっかり熟読してくれ」

「分かった。穴が開くほど読み耽るわ」

「信長殿……」

「あと他に話しておくことは何かあったかな」

「あ、それなら殿下の当面の動きを教えて頂ければ」

「そうだな。まずは……」


 二人に俺の当面の行動を教えていると、くいくいと袖が引かれた。

 あんだよと隣の幽羅を見ると、


「あの方、ずっと放置しとりますけど……ええんです?」

「「「あ」」」

「銃声聞いてもピクリとも反応せんかったし」


 慌ててクロスに駆け寄る俺と元康。


「し、心臓が止まってます……」

「うっそだろ!?」


 お前どんだけショックだったんだ!?

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