帰省③
1.反省会
晩飯の準備があるとのことで久しぶりの稽古は終了。
ジジイはとっとと家の中に引っ込んでしまった。
「ち、畜生……一撃も……一撃も与えられなかった……」
既に傷はお馴染みのエリク汁のお陰で癒えている。
しかし精神的なダメージは別だ。
正直、立ち上がるのも億劫だった。
「……あ、あのぅ」
「どうした庵? ああ、情けない姿見せちまって悪いな」
自分の男が一方的にボコられる姿なんて見たくなかっただろう。
そう謝罪すると庵は慌てた様子で反論した。
「い、いえ! 情けなくなんてありません! 御二人もそう思いますよね?」
「うん、圧倒的な実力差を前にしても欠片も闘志を揺らがせないのは凄いと思うよ」
「あれだけ凄惨な目に遭っても微塵も堪えていないタフさは驚嘆に値します」
うん……まあ、慰めとかではないんだろうけど……俺個人としてはねえ。
あーあ、ジジイを倒すにはもうこの惑星諸共消し去るしかねえのかなあ。
あーあ、俺が宇宙の帝王F様だったらなー。
「私が聞きたいのは……その、分からないからなんです」
「あ、私も聞きたいかな。傍から見ててホント、意味が分からなかったし」
???
「つまり、どういうこと?」
何が分からないのかが分からない。
ちゃんと主語を入れてくれ主語を。
「えーっと、見学していましたが兄様の動きは速過ぎてまるで見えませんでした。
でも、お爺さんの動きは普通に見えたんです。見えるってことは遅いってことですよね?
見えないぐらい速く動く兄様に何故、見えるような速さの攻撃が当たるのか
見えるような速さでしか動いていないのに、何故目にも留まらぬ攻撃が捌けるのか」
三人が揃って首を傾げている。
それだけ、奇妙な光景だったということだろう。
「……確かに意味分からんよな。俺も今日の今日まで分からんかったし」
「「「え!?」」」
見えている攻撃が躱せない。
当たるはずの攻撃が当たらない。
庵の呈した疑問、実際に戦ってる俺が疑問に思わないはずがないだろ。
「これに理屈をつけるなら、そりゃもう俺が弱い以外にはあり得ねえ……と、そう思ってたんだがな」
十年近く、俺はジジイのすっとろい攻撃に嬲られ続けてきた。
十年近く、俺はジジイのすっとろい動きに拳をすかされ続けてきた。
それは俺が弱いからだと思ってたが……どうも、違うらしい。
「あのジジイは病的に”巧い”んだ」
「技術、ですか。確かにそれ以外にはあり得ませんが……」
分かるよアーデルハイド。
あまり、そういうテクニカルな動きをしていたようには見えないってんだろ?
そうだよ、そこだよ。そこがジジイのイヤらしいとこなんだ。
俺もすっかり騙されてたわ。
高い技術ってのはな、素人にだってある程度は伝わるんだ。
何かすげえことしてる、ってふんわりした具合でだがな。
視認出来る速度で動いてりゃあ尚更だ、高等な技術を混ぜてたら目を引いて当然。
だがジジイの動きを見る限りではそんなものは微塵も窺えない。
分かり易い巧さが見えてりゃ三人もこんな質問はしてないだろうよ。
「どういうことなの?」
「あー……何て説明するべきかな」
イマイチ、上手な説明が思いつかないんだよな。
俺自身、フィーリングで何となく理解してる程度だし。
いや、理解ってのは違うか。
実際に答え合わせしたわけじゃないし現段階じゃ推測と言うべきだろう。
俺はピンと人差し指を立てて庵に見せ付ける。
「庵、俺が良いって言うまで、ここを見つめ続けろ。真剣にな」
「え? わ、分かりました!」
言われるがまま庵は俺の人差し指を凝視し始めた。
そして一分、二分、三分と時間が経過したところで僅かに”揺らぐ”。
俺はその瞬間を狙い打って、庵のちっぱいを揉みしだく。
「あんっ……って……な、何をするのです!?」
「つまりはこういうことだ」
「どういうことですか!?」
ちらりとアンヘルとアーデルハイドを見る。
二人はどうやら言わんとすることが分かったらしい。
しかし、信じられないって顔してるな。
でもな、これ以外には考えられないんだよ。
「わ、私を仲間はずれにしないでください!」
「ああ、悪い悪い。えーっと……つまりは何だ……」
俺は地面に真っ直ぐの横線を引く。
「良いか? この直線の状態が意識を集中させている状態だと思ってくれ」
横線に分かり易いじぐざぐの線を付け足す。
「これが集中が途切れた状態な。
簡単に言えばジジイはこの集中が乱れた瞬間を的確に狙い打ってるんだと思う。
だから当てられる、だから効くんだろうよ」
無論、俺だって拳士の端くれだ。
そう簡単に集中が途切れるようなことはしてねえさ。
つか、このじぐざぐ線のように露骨に集中を途切れさせたことはないはずだ。
でも、人間は完全じゃない。
幾ら集中しているって言っても完全な状態を維持し続けることは不可能だ。
完全な直線は引き続けられない。どこかで必ずブレる。
そのブレこそが人間がどう足掻いても埋められない部分なのだ。
しかし、ブレを最小限に留めることは出来る。
ブレを最小限にして限りなく直線に近付けられれば、
傍目からはずっと集中し続けているように見えるだろう。
「ねえ、カールくん……」
「ああ、分かってる。口で言うほど簡単じゃない」
戦いってのはそう単純なものじゃない。
集中が途切れるって言っても、一瞬、完全に制止するわけじゃあない。
無防備に全身を晒すなんてことはあり得ないんだよ。
あくまでほんの少し、どこかに隙が生じるだけだ。
「そして、だからこそ腑に落ちない点もあるよな?」
それは俺の説明が全部終わってないからだ。
だから、黙って聞けと言ってやるとアンヘルは素直に頷いた
「刹那の間隙を狙い打つ……まあ、俺もやれば出来なくはないだろう」
格下か、その呼吸を熟知しているような相手ならば。
だが、それにしたって速度が重要になる。
少なくとも完全な素人である庵の目にも見えるような速さじゃ機を逃すだろう。
「ですがヴォルフさんは――――まさか!」
「気付いたかアーデルハイド。そう、そのまさかだよ」
ジジイは予測しているのだ。
俺の集中が切れるタイミングを、どこに隙が生じるのかを。
完全に予測できるのなら速度なんて重要じゃない。
予測した地点に攻撃を”置く”だけで良いのだから。
回避はもっと簡単だ。
そこまで相手を看破してんなら、攻撃がどこから来るかぐらい分かる。
分かっているなら速度は要らない。
その攻撃が来る前に回避しちまえば良いだけだもの。
「そのようなことが……で、でも兄様。そんなことが出来るのは……」
「ジジイが俺をよく知ってるから? そりゃあ違うぜ庵」
仮に今、この状態の俺が過去に遡って俺を知らないジジイに喧嘩を売ったとしよう。
同じようにボコられるだけだろうな。
「良いか? ジジイは一度も俺の攻撃を喰らってないし、一度も攻撃を外してないんだぞ?」
つまりは、だ。
考えるだけでも頭が沸騰しそうなクソ面倒なことを最初から最後までやり続けてるわけだ。
それも、事も無げにな。
そんな芸当が出来るジジイだ。初見の相手でも同じことをやってのけるだろうよ。
「実際、試してみたしな」
「試してみた?」
「ああ、ジジイが何やってるか予測ついた段階で何度か意図して集中を乱してみたんだよ」
結果? 完璧に狙い打たれたよ。
「いやでも、初見の相手だとやっぱり無理じゃない?
初対面の人間がどこで集中を切らすかなんて分からないし」
「分かるんだよ」
うん……俺も今思ったが理屈で考えてる時点でそもそも間違いなんだろう。
頭じゃなく感覚、本能で察知出来て初めてジジイと同じ芸当が可能になるのだと思う。
どれだけの修羅場を潜ればその境地に達せるのやら。
まあ、俺は別に辿り着けんでも良いがね。
今は酒場の店員だし、将来的にも酒場の店員が酒場の店主になるだけだからな。
「…………兄様のお師匠様は、とても凄いのですね」
「忌々しいことにな」
つか、もう良い時間だな。
「そろそろ俺の実家行こうぜ」
まだ帰って来てないかもだが、待ってりゃそう遠くない内に帰って来るだろ。
「ちなみにカールくん」
「ん?」
「お師匠様の手の内が分かったわけだけど……対策とかは?」
「対策? んなもんねえよ」
強いて言うなら圧倒的なスペック差で押し切るぐらいか。
当たっても問題ないぐらい頑丈になる。
分かっていても回避出来ないほどの速さで攻撃する。
これぐらいしか思いつかんわ。
「ああ、魔道士とかだったら超長距離からバ火力で面制圧するって手もあるな」
「み、実も蓋もないですね……」
「そう言われてもねえ。実際、それぐらいしか方法ないだろ」
ああでも魔法そのものを殴り飛ばされる恐れがあるし確実とは言えんか。
でも、少なくとも近接でバチバチやるよか勝率は高いんじゃね?
「防御に徹して体力が切れるのを待つとか?」
「相手が仕掛けて来なきゃ意味ないじゃん」
どっちが先に動くかの根競べになるな。
さぞや神経が磨り減るだろうぜ。
そうなれば益々ジジイ有利だ。やってらんねえ。
「で、では気を用いれば……」
「庵、気の使い方を俺に教えたのはあのジジイだぜ」
そもそもからして引き出しの数が違い過ぎるんだよ。
(まあ、本当に”手段を選ばなければ”俺にも勝ちの目は見えるかもしれんが)
女子供にするような話でもないし、何よりやる理由がない。
俺は頭をよぎった数々の物騒な案を蹴り飛ばし忘却の彼方へと追いやった。
「……っと着いたぞ。ここが俺の家だ」
二階建ての何の変哲も無い一戸建て。
故郷の土を踏んでも懐かしさは感じなかったが、
十五年も過ごした家を目にすると少しだけ胸にクるものがあった。
「この家はお義父様が?」
「ああ、親父が建てた。ちなみに俺らが滞在してる家は祖父さんが建てたんだぜ」
玄関に鍵はかかっていなかったのであっさり中に入れた。
家の中は俺が住んでた頃とさほど変わりは……いや、少し違うな。
若干物が散らかってるし、微かに女の残り香がする。
やっぱり俺が居なくなったから女を連れ込んでいたらしい。
「ちなみにベルンシュタインさんの部屋は?」
「二階にあるぜ。キングカールってプレートが貼り付いてる部屋がそうだ。
俺はリビングで休んでるから見たいなら見に行っても……ってはええなオイ」
見に行っ、ぐらいで全員二階に向かってったぞ。
少し呆れつつ、キッチンに向かい冷蔵庫から栄養ドリンクを取り出す。
親父が体力仕事だからな、栄養ドリンクは常備してんだ。
「…………ふぃー」
染みる、超染みる。五臓六腑に染み渡るわこれ。
ああ、家に居た時もこんな感じだったな。
ジジイとの鍛錬があった日はくたくたになって帰って来て、栄養ドリンクを飲んで一服。
親父が仕事休みで家に居る時は、飯用意しててくれたんだよな。
「居ない時は帰って来た親父と一緒に飯食いに……おや?」
噂をしてたら影が差す。
親父の気配を感じる。どうやら帰って来たらしい。
「ハインツのハはハッとするほど男前のハ~♪ っと」
アホな鼻歌が聞こえてきやがった。
すんげえ、実家に帰って来た感があるわ。
「ってあれ? カール? お前、何で家に居るんだよ」
リビングに顔を出した親父が俺を見て目を白黒させる。
つーか、灯り点いてる時点で誰か家に居ると気付けよ。
鍵もかかってなかったし無用心過ぎるだろ。
「あれか、仕事辛くなって逃げて来たのか?」
「ちげーよ。伯父さんが急用で一週間ぐらい店閉めることになったから帰省したの」
「急用?」
「ああ、伯父さんの師匠が急死したらしくてよ。ディジマの方に行ったんだわ」
「ほう、そりゃまた」
つーか、久しぶりに会った息子ぞ?
何かもっと、リアクションあっても良い……良くない?
「それ言うなら俺ぁ久しぶりに会った親父ぞ」
「いや、親父の顔なんて見てもなあ」
「俺だって息子の顔見てもなあ……だよ」
言いつつも、親父は笑っていた。多分、俺も笑ってる。
ああ、俺……帰って来たんだなあ。
「それで? ちゃんとやってんのかお前」
「ったりめえだ。今や俺はバーレスクの名物店員だぞ」
「悪い意味で?」
「悪い意味なら言わねえよ!!」
「冗談だ冗談。顔を見りゃ分かる。楽しくやってるらしいな」
それはもう。
「兄貴はどうだ?」
「俺の影響だろうな、ちょっとはマシになってるぜ」
「具体的には?」
「アパートの大家さんが溜め息吐いてたから心配して声をかけました」
「マジでか!? おいおいおい、すげえなオイ! これ……お祝いするべきか?」
失礼な奴だ、とは言えないな。
俺よりも伯父さんのことを知ってる親父からすれば驚天動地なんだろうよ。
「ちなみに、女関係は? 妖怪下着落としとはどうなってんの?」
「まあ……そこそこ? 友人ではあるが、それ以上はなあ」
これはシャルがどうこうってより、伯父さんの問題だろう。
多分、伯父さんって普通の恋愛どころか初恋すら経験してないんじゃね?
そんな俺の推測に親父は正にその通りと大きく頷いた。
「何つーのかな。兄貴ってその手の経験皆無なんだよ、いやマジで。
異性との触れ合いがなかったわけじゃないんだぜ?
俺もあちこち連れ回してたし、実際俺より兄貴が良いって女も居たんだよ」
ほう、そりゃ初耳だ。
でもまあ、親父か伯父さん、どっちが良いかって言われたらな。
明るくて大抵のことは小器用にこなしてみせるけどチャラい親父。
暗くて不器用だが確かな誠実さを持つ伯父さん。
本質を重視するタイプの女は親父より伯父さんを評価するんじゃねえかな。
いや、親父に誠実さがないとは言わんけどね? 比較したら親父のが誠実さでは劣るだろう。
「興味がないわけじゃねえと思うんだ。
ただ、女よりも強く興味を持つのがあればそっちに意識集中させちゃうって言うの?」
「あー……分かる分かる。伯父さん、どっちも取るとか出来なさそうだもんな」
「ああ、不器用なんだよ」
あれもこれもとやってたら、処理し切れないのだろう。
頭が、じゃなくて心が。
だがそれは悪いことばかりでもない。
何せそれは一つの事柄にトコトンまで集中出来るってことでもあるんだからな。
「まあ、女作るだけが人生じゃねえし兄貴の好きなようにすりゃ良いけどさあ」
言いつつも、多分親父は伯父さんが誰かとくっつくことを願っている。
傍でずっと寄り添い続けてくれる人が居れば安心できるからだろう。
「シャルの頑張りに乞うご期待ってとこだな」
恋愛に限らず対人関係ってのは数を踏んでナンボだ。
成功と失敗を繰り返して経験値を積み上げ形作っていくもの。
恥ずかしい失敗とかだって無駄じゃねえんだ。
失敗を知るから、次は失敗せずに済むわけだからな。
成功も失敗もしてないってことは、そりゃ土台がないのと同じこと。
器用な奴ならそれでも何とかやれるだろう。だが伯父さんはそうじゃない。
不器用な伯父さんに進展を期待するのは酷だ。
関係を前に進められるとしたら、シャルが頑張るしかない。
(まあ、アイツはアイツで恋愛経験皆無っぽいけど)
破られてない処女の臭いがするんだよアイツ。
いや、モテないってことはないと思うぜ?
ただ、男よりも女にモテて来た感じがひしひしと。
「そういやカール、お前もう飯食ったのか?」
「あん? いやまだだけど」
「そうか。それなら食べに――――ん?」
とんとんとん、と軽い足音が上から下に響く。
親父が誰か居るのか?
という顔をするが……そういやアンヘルらのことはまだ言ってなかったな。
どう話したものかと悩んでいると、三人がリビングに顔を出す。
三人は親父の顔を見て驚きを露にし、こう口にした。
「「「ラインハルト(店主)さんそっくり!!」」」
まあ、兄弟だしな。
最近は憔悴し切ったような表情と目の下の隈もなくなってるし、
以前よりも親父と似た顔に近付いたのは確かだろう。
「カール、このお嬢さん方は……」
「ん? ああ、まあ察しの通り――――」
「デキちゃったか」
「殺すぞ」
「え、違うのか? 俺ぁテッキリそういう報告だと……」
お前実の息子を何だと思ってんだ。
流石の俺もそこまで無責任な男じゃねえよ。
「…………まあでも万が一に備えて子供の名前は考えてあるけどね」
ぼそっと何か呟いてるけど無視無視。
「つーか、カール。紹介してくれよ。お前の女なんだろ?」
「え? お、おう」
三人を見ると、承知していると頷いてくれた。
まずはアンヘルが一歩前に出て、恭しくお辞儀をする。
「はじめまして御義父様。アンヘル、と申します。
カールくんとは春先からお付き合いさせて頂いております」
親父が俺を見る。
その瞳は雄弁に語っていた。
テメェ、良いとこのお嬢さん相手にどう振舞えば良いかわかんねえぞ! と。
安心せい親父、変にかしこまる必要はない。そもそもコイツらそんなの気にするタイプじゃねえし。
と、視線で伝える。
「兄様と結婚を前提としたお付き合いをさせて頂いております、櫛灘庵です」
親父が俺を見る。
その瞳は雄弁に語っていた。
兄様!? と。
俺は視線で答える――プレイだ、と。
「お初におめにかかります、御義父様。私の名前はアーデルハイド。
ベル……カールさんとは返し切れぬ恩を受けたことが切っ掛けでお付き合いをはじめました」
親父が首を傾げている。
はて、一体どうしたのだろうか?
というか、ようやく名前で呼んでくれたなアーデルハイド。
すっげえ恥ずかしそうだけど嬉しいぜ。
「こ、こいつぁご丁寧にどうも。
俺ぁ、ハインツ・ベルンシュタイン。ケチな大工でさぁ。
皆さんには愚息がお世話になっているようで……ホントもう、何とお礼を申し上げたら良いか」
ぺこぺこと頭を下げる親父。
変にかしこまる必要はないつったのにな。
「いえそんな! むしろ、私の方が兄様にはお世話に……」
「ええ、社交辞令でも何でもなくカールさんには随分迷惑をかけていますから」
「カールくんが居なければ私は今も……でしたから」
最近忘れがちだったけど、コイツら全員背景が重いんだよな。
何やかんや全員解決……はしてねえな。
アンヘルとアーデルハイドはそうかもしれんが庵は違う。
黒幕がまだ残ってるし、最近になって新たな問題が追加されたもん。
まあ、後者に関しては本人知らんし今のところ伝える気もないが。
「そ、そうですかい? でもこの馬鹿息子は……」
「はいはい、何時までも続きそうだからそこまでな。
親父、事後承諾で悪いが祖父さんの家、使わせてもらってるぜ」
「そりゃ構わねえが……あんなとこに泊めて良いのかよ?」
ぼそぼそと俺の耳元で囁く。
良いとこのお嬢さん三人だから気ぃ遣ってるんだろうがその必要はない。
そんなことを気にする狭量な奴らじゃねえしな。
「そ、そうか? それなら良いんだが……」
「つーかさぁ? カマトトぶってんじゃねえよ親父ぃ」
テメェ、もうバレてんだからな。
今の今まで娼館でハッスルしてたのはよぉ。
香水の臭いがぷんぷん漂ってんだよぉ。
「な、な、な……て、テメェ……い、一体どこでそれを……!?」
「リリおばちゃんが教えてくれたよ。テメェが夜までハッスルしてるってな」
「あ、あ、あのババア……!!」
わなわなと怒りに震える親父。
どう考えてもコイツの自業自得である。
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