追憶の汗(5)
踏み込んだ拍子に、ざさっと、靴と地面の擦れる音が鳴った。
これで勝敗を決めると意気込んで、木刀を振り下ろした。
しかし、そこには、アレスの姿は無かった。
当てる相手のない木刀は、空気を斬る。
振り下ろす勢いを両手で止められず、そのまま、地面を打つ。
地面には、拳くらいの大きさの石が落ちていた。
はっ! と気が付いた時には遅かった。
アレスは、私の真後ろに立っていた。
アレスは、木刀を下段から上段に振り上げる。
ノキルは、身をのけ反り、かろうじて避けた。
アレスの木刀の先端が、ノキルの胸当てを僅かに削る。
ノキルは、木刀を構えて、アレスと対峙した。
「ノキルさん。音で惑わされてはいけません。音は、目で見なくても、耳で捉える事ができます。耳で音を捉えて、音の無い場所に目を向けるのです」
疲労困憊したノキルの腕は、ぷるぷると震えていた。
木刀を構えるのも、やっとだった。
アレスは、ノキルに休む隙を与えず、再び攻撃を始めた。
アレスは、容赦なく、攻撃を繰り返す。
アレスの猛攻に、ノキルは、ひたすら耐え忍ぶ。
アレスの攻撃を木刀で受け止めるだけで、精一杯だった。
私は、骨盤から下に重心を集中させて、足で地面を掴み、踏ん張る。
しかし、踏ん張る靴先で地面を掘りながら、じりじりと後方へ圧されていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます