今回の震災ですぐに国の対応を非難する人のこと




 これを書いている時点で被害の全容がはっきりしていませんが、1月1日の16時過ぎに発生した「令和6年能登半島地震」に纏わることについて、現時点で個人的に思う事などを書こうかと思います。


 その前に、まだ被害の全容が判明している訳ではありませんが、現在判明している128名の犠牲になった方々のご冥福をお祈り申し上げると共に、安否不明の195人の方のご無事が確認できることを切に願っております。


 私の住む長野県北部も、今回の地震で揺れました。

 最も、震源地に近い能登半島石川県、福井県、富山県、新潟県の各市町村ほどではありません。

 長野市では一部地域で上水道管が破裂したところもあったようですが、1月2日には復旧しています。


 一応、地震が発生した時の私の家の状況ですが、妻は長野市の介護施設に朝から出勤しており私一人自宅に。

 隣に両親が住んでおり、そちらには両親と、帰省してきた弟夫婦がいました。


 1月1日の16時過ぎに、私の住む長野県北部でも揺れを感じました。

 私の住んでいるところは近くの山塊由来の震度1や2の局地的な地震が多く、ヘタしたら県内ローカルのTV局のテロップでも地震があったと流れないこともある程、微細な揺れは多いのですが、今回はそこそこの揺れが長く続きました。

 体感時間では1分以上揺れていた気がしますが、実際はそこまで長くなかったのかも知れません。

 揺れの程度はどれくらいかというと、天井から吊るしてある照明器具が2.30cmほど揺れる程度で、家具が倒れるということはありませんでした。

 東日本大震災の次の日に起こった、長野県北部地震の時に家具等が倒れないように固定していたおかげでもありますが、おそらく固定していなくとも倒れる程の揺れではなかったと思います。

 私の家の周辺は、先に書いた通り近くの山塊の岩盤上にあるため、今回のような広域的な地震の場合、長野市辺りよりも揺れないのです。

 自宅の水道ガス電気のインフラにも異常は無く、隣の両親のところへも安否確認とインフラが生きているか確認しに行ったところ帰省してきていた弟が確認しており、無事でした。


 その後、近所の高齢者世帯を4軒回って被害が無いか聞いて回りましたが、どの家も正月でお子さん達が帰省していたこともあって、無事に確認はできました。その後地区の自治会の会長に一応異常なしの連絡を入れています。

 なぜ他の高齢者宅の様子を見に行ったのかというと、昨年自治会の会長をしていたおかげで、今年はそうした役割をすることになっていたのです。


 地震、洪水などの大規模の災害の時に、真っ先に対応するのは地元の住民自治会と、自治体の職員です。

 それと救助活動の際の警察、消防署の職員ですね。


 おそらく多くの市町村では、災害時の防災避難計画というものが策定されているはずです。

 災害があった場合の対応が、一応は決まっています。

 市町村によってはざっくりしたもので具体性に乏しかったりしますが、それでも一応は決まっており、市町村の広報誌などで周知されているはずです。

 そこには被災した場合の指定避難所の場所等も書かれているはずです。


 そして、災害に備えて各家庭で常備しておいて欲しいものなども書かれていると思います。

 おそらく多くのご家庭では非常時持ち出し袋などに纏めていることと思いますが、各家庭で災害に備えて準備を怠らないようにして下さいと要請されている筈です。

 まあ、準備をする、しないは各家庭(単身者も1家庭ですよ)で判断することなので強制ではありませんから準備していない家庭があっても仕方ないですが。


 そして地区住民自治会は、その地区に住む住民で構成される任意団体ですが、災害の際にはその地区の住民を円滑に避難誘導する役割を市町村自治体から期待されています。

 市町村などの自治体は住民票登録などで各地区の住民世帯は把握しているはずですが、そうした自治体が持つ住民の情報というのは個人情報保護の観点から地区住民自治会には教えてもらえません。

 地区住民自治会としては災害時に地区の住民を避難させるロードマップの作成や、地区の各世帯内に災害時にその家族を連れて避難できる人がいるか、避難時に世帯以外の助力が必要かどうかを確認するために、世帯調査票を地区内の世帯に配布して任意で提出してもらい把握しています。

 地区住民自治会は起こり得る災害への備えとして、先に上げた地区住民の避難ロードマップ作成や、避難時に支援が必要な世帯のピックアップ、そして災害時に地区の公会堂を指定避難所にできるだけの備蓄や整備などを普段から行っています。

 今回の地震で私が近隣の高齢者世帯の様子を見にいったのも、そうした避難ロードマップの一環です。

 そして備蓄に関しても、災害時に備えてガソリン発電機や炊き出し用のプロパンガスボンベとコンロ、石油ストーブ、他に米等保存の利く食料などを備蓄しています。

 ただ買って置いておくだけではいざと言う時に使い物にならないこともあるため、年1~2回の地区住民向けの防災訓練で動作を確認したり、毛布類などは仕舞いっ放しにすると虫が湧くこともあるので、月に1回程度干したりもしています。

 実際に災害となった場合は、避難所の運営を行いつつ、加入している全世帯の住民の安否を確認し、被災した地区住民の救助を警察、消防と共に行うことになっています。


 こうした自治会組織の運営資金は、私の住んでいるところの例で言えば、自治体からの補助金も多少(本当に多少。地区住民総出の堤防草刈りとかを自治体の環境保全事業の一環として行って2万円とか)ありますが、ほとんどは地区住民から頂く自治会費で賄っています。

 これは任意で提出していただいた世帯調査票の各世帯人数や世帯内で職に付いている人数などで変わりますが、高齢の単身世帯でも年間1万5千円程度頂いています。

 近年、アパートに住む方などで自治会加入を断る方などもけっこう多く、あくまで地区住民で形成する任意団体なものですから強制力もそこまで無いので、徐々に運営資金の規模は縮小傾向にあります。

 私の住む地区も徐々に高齢化と過疎化が進んできており、世帯数も減って来ているので住民自治会の活動の規模は縮小傾向です。


 ちなみに運営を行う自治会役員の手当は1年間で7千円~1万円で、決して高くはありません(私の住んでいる所では)。


 おそらく日本の各地域にはこうした地区住民自治会が存在しており、同様の目的で活動しているはずです。


 災害が起こった場合、まずは個人、そして地区住民自治会が避難している住民の情報を取り纏め市町村へ支援要請、そして市町村から県へ、県から国へという流れです。



 さて、ここまで長々書いたところで、ようやく本題なのですが。

 ズバリ言ってしまうと、SNS中心に今回の震災の政府対応に難癖付けている人たち、こうした災害時の仕組みを知らないで騒いで言ってるだろ! ということです。

 知ってて言ってるなら、もっと悪質。

 単なる支持政党のプロパガンダに震災を利用しているだけです。

 国に文句言う前に、まず自分の住んでる自治体の防災避難計画を知ってるのか、と問いたいですね。

 具体的に誰がどのような支援を行うように定められているのか、ご存じなんですか?


 例えば物資の備蓄が十分でない、避難所の装備が貧弱だ、国はもっとしっかり個人のプライバシーを守れる資材を備えろと言っている方、それは国を責めているのではなく、その市町村自治体と地区住民自治会を責めているのと同義です。

 実際にそれを保管しておく場所の確保、物資の在庫確認をしすぐに使用できる状態を保全する労力などはその地域の自治体、地域住民(の代表と見なされる自治会)が行うことになります。

 それらを組み込んだ防災避難計画を事前に策定していなかった市町村が悪いと言っているのとまったく同じことです。

 国が全市町村分買って市町村に送っておけと簡単に思うのかも知れませんが、何度も書きますが保管と保全はどうしても自治体の負担になります。

 どの程度の規模、どの程度の大きさなのかわかりませんが、現時点でも市町村の物品保管庫で余裕があるところ、見た事ありますか?

 こういう投稿をする人はおそらく見たことがないのでしょうね。

 新たに倉庫を作るとしても用地の取得や建築費用も自治体持ちでしょう?

 自治体の財政だとそこそこの負担になりますよ。

 そのための自治体職員の増員も必要ですよ。

 今の職員数でも普通に手が足りず着手できていない施策もあったりしますから。


 それと、初動が遅い、対応が遅いと言っている方。

 今回の政府の初動は全く遅くないですよ。当日16時10分に震災が発生し16時11分には官邸対策室設置、16時15分には総理指示が降りています。石川県の馳知事も16時45分に自衛隊に災害派遣の要請をかけています。

 自衛隊の救援の動きが鈍いように見えるのは、能登半島の地理的な要因です。

 能登半島の中心まで届く幹線道路の本数が少ないうえ、殆どが地震で通れなくなっているんですよ。

 しかも能登半島は平野は殆ど無い、山また山の地形です。

 そこの道路があちこちで寸断されているんです。

 だいたい、能登半島は相当に広いんです。

 離島を除く東京都全域がすっぽり収まるくらいです。

 石川県の県庁所在地の金沢市から珠洲市までの距離って、だいたい東京の品川から群馬県の前橋くらいはある。輪島市だって品川から埼玉の熊谷くらいはある。

 その間の道路がどれだけの箇所で寸断されているか。

 関東平野だったら迂回路は幾つもありますが、能登半島は何度も書きますが山がちで山間を縫って道路を作る必要があり、道路の本数も多く通せないため、主要な幹線道路はのと里山海道、能登半島を一周する国道249号線くらいです。

 幹線道路だけでなく、県道や市道、町道といった生活道路も当然のように寸断されています。

 どうやって行くんだよって話なんですよ。

 破損や土砂崩れで寸断された道路を、複数の部隊が複数の箇所を地道に修復しながら進んでるんです。


 空輸? 能登空港も地震で滑走路がボコボコで着陸できません。

 ヘリコプターはそうした人が思っているほど人員をそれほど多く運べませんし、道路修復に必要な大型重機も運べません。

 だいたい地震被害甚大で、小中学校の校庭が地割れしている場所が殆どの奥能登地域のどこに大型ヘリが着陸できるのか。

 着地できる場所を地上から安全を確認した上でないと、着地後大破して二次災害にもなりかねない。火災炎上したら、地域の消防リソースを奪うことになってしまう。

 そうなると当日夜にヘリで人員、資材輸送は無理だ、と普通に思考できる人なら帰結するはずです。

 発着する地面の確認が出来たところには、既にヘリでの人員、物資の輸送は始まっています。

 あと、何か空中から支援物資投下すれば孤立している集落に届けられるのに何故やらないと言っているコメンテーターや記者がいるようですが、支援物資って重さどれだけになると思ってるのか。軽そうに思える紙おむつだって段ボール一箱になれば結構な重さです。それを上から落すって、人や家屋に当たったらタダじゃ済まないですよ? 人なら致命傷になるし家屋でもただでさえ地震でダメージ負ってるのに、ヘタしたら何とか倒壊を免れていた家屋でも倒れる危険性があるのに。

 ヘリコプターで低空でホバリングしながらやれと言うのでしょうか。ヘリコプターの低空ホバリングは相当操縦難度は高いでしょうし、ただでさえ繊細なバランス取らなければならないのに、支援物資の荷重を移動させる訳ですから墜落する危険性が各段に高くなりますが。

 まあそうした事故が起これば嬉々として叩くのでしょうけど。



 海路? 今回の地震で津波警報が出ていたのは覚えてるんですか?

 少なくとも奥能登地域は実際に津波が襲っています。

 そんな中で岸に近づけるとでも?

 津波警報が注意報にランクダウンしたのは2日午後です。そして沿岸部が地震によって隆起していることも観測されました。

 更に言えば奥能登には漁港はあっても大型船舶が入港できる港はありません。貨物を乗せた船は元々接岸できる設備がない。

 だから輸送艦『おおすみ』はLCAC(ホバークラフト)を使って人員と重機を陸揚げしているのです。

『おおすみ』が3日前の1月4日に輪島市沖に到着したのも、1月2日に呉を出港してほぼ最大船速で向かってくれたおかげですよ。船は飛行機のスピードじゃあ移動できないんです。


 何を見て遅いと言っているのか。


 もしかして遅い遅い言ってる人は本気で転移装置や転移魔方陣が実用化されてると信じているのかと疑いたくなるほどです。


 そもそも、こうした地方の交通状況を良くするような国土強靭化予算などに反対してきたのは、現在の国政批判を繰り広げているあなた方でしょうに。

 国土保全などの土木系予算を目の敵にしていましたよね。

 そうしたおかげで、全国の中小、零細の土建屋さんが食えなくなって廃業していった結果、こうした災害時にすぐに復旧作業に当たれる土木技術者が各市町村で少なくなってしまいました。


 そして最悪だなと思うのが、YouTubeなど動画配信者による僅かばかりの支援物資を持っての被災地訪問。

 言っちゃ悪いかも知れませんが動画やSNSの閲覧数上げに被災地を利用するな。

 山本太郎やジャニーズの後釜滝沢秀明の会社も行ったらしいけど、本当に何しに行ってんのか。

 物資持って行ったら、そりゃあんたらが到着したとこの避難所は喜ぶだろうさ、食い物来たって。

 ただ、その道は自衛隊があんたらの持ってった物資以上の大量の支援物資を運ぶための道であり、幹線道路以外の細かな生活道路を復旧させて、孤立してしまった集落にも救助が入れるようにするための人員や重機などを運ぶ大切な道なんだから、渋滞させて現着を遅らせるような真似はすんなよ。

 ただでさえ自衛隊車両や物流トラック以外にも能登地域の人たちが不足した灯油などの物資を調達するために使ってる大事な道なんだから。

 だいた本当に「困っている人の役に立ちたい」と思ってるなら、今回の震災で最も被害を受けた奥能登にわざわざ今行かなくても、もっと手前の七尾市や、富山県の砺波市辺りだって相当に被害を受けてるんだから、そっちだって良くないか?

 政府の支援は遅すぎる! という義憤に駆られてるのかも知れないですが、あなた方の支援は政府の支援を遅らせながら数百人の腹をせいぜい2食満たしただけにしかなっていない。山本太郎や動画配信者はもっと少量。

 それで生活道路の復旧や水道や下水などの復旧などの地味で辛い作業はしないで渋滞を作りながら帰路に就くのでしょう?

 それは迷惑なので本当に止めて下さい。

 更に言えば、自治体や避難所間での要らぬ軋轢の元になります。

 これも仮になりますが、そこの避難所が自治体に届いた公的な支援物資を受け取っているところだとするならば、公的な支援物資の分配の判断が難しくなります。

 個人の支援物資が届いた避難所に対して、避難住民2食分の食料が来たのならば、限られた物資だから他の避難所に回そうかというような判断をするか、あるいはイレギュラーとして通常通り分配するか。

 どちらの判断をしたとしても支援物資を持ち込まれた避難所とそうでなかった避難所の間に感情的な軋轢は生まれますし、そうした判断をした自治体職員に対しても不信感が生まれるようになります。

 協力し合わないといけない局面で要らぬ分断を作るだけです。


 まあ、それを見越して石川県では個人の支援物資の受け入れやボランティアの受け入れは完全に停止していますが、本当にどうしようもありませんね。

 動画配信者や山本太郎らの上げる動画やSNSは一切見ないというような地道な方法しかないのでしょうか。


 そもそも今回の地震で被害を受けている地域は奥能登だけでなく石川県全域、福井県、富山県、新潟県まで停電や水道管損壊、家屋の一部損壊、土砂崩れなどの被害が出ている広域災害です。

 今は最も被害が甚大な奥能登4市町村にばかり報道やSNS発信の目が向いていますが、他の地域も決して無傷は訳ではありません。目に触れずひっそりと不便な生活に耐えている方々だって多いでしょう。


 と言う訳で長くなってしまいましたが、国に文句言う人は、おそらく普段から地域や自治体のことは一切眼中に入っていないので、彼らが言ってる文句の内容は非常に薄っぺらく、根本の解決には一切繋がらない戯言だな、と思った次第です。












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