第15話 不動の忠誠
ここは地獄だ。毎日のように殴られ辱めを受けた。死にたい、そう何度願っただろうか。でも、もしかしたら白馬の王子様みたいに誰かが助けにきてくれるかも。そう願ってしまい、死ぬのをまた諦めてしまう。そしてまた朝が来て、やっぱりか、と勝手に誰かに失望する。身体は幸せを忘れそして、勝手に幸せを求める。もう、耐えられない。今日こそ死んでやる——————。
「ご主人様?」
「ッ、!」
「ど、どうかなさいましたか?」
「いや、何も問題ない。」
エクステティアはこの地下に来た時から思考に靄が掛かったような感覚に襲われていた。それにとてつもない苛立ちを感じていたが、この部屋に足を踏み込んでからその靄は完全に晴れていた。しかし、その代償とでもいうようにフラッシュバックする映像が視えるようになってしまった。エクステティアはそれを悟られまいと話を逸らす。
「そういえば、さっき言ってたのはどこだ?」
「こちらでございます。」
アロに案内されたところは部屋の端っこだった。
「ただの壁があるようにしか見えないのだが?」
「はい、ではお手をこちらに。」
アロが指を刺した壁の一つに手を当てる。
「魔素をおながしください。」
言われるがまま掌から壁に向かい魔素ながす。するとながした魔素が壁の淵に沿って流れ始める。そこに魔素が十分に行き渡ると、壁がへこみ横にスライドする。そこには人が4人、入れるかどうかの小部屋があった。
「ここの人間達は隠し扉が好きなのか?」
「そのようですね。」
エクステティアは少し呆れながら部屋に入ろうとするが、小部屋の床に張り巡らされた何かを感じとり、止まる。
「これは……魔法陣か?」
「そのようです。しかも、転移魔法の。」
「先程の壁もそうだったが、魔法陣しかも転移魔法を積み込まれた陣をつくりだせるような人間など先程は見かけなかったが?どう思う?」
魔法陣と言うのは基本地面や壁、物など何もないところから魔法を放出させることができるしろものなのだが、魔法陣をつくりだすのに必要な魔素の消費量が異様に高い、そのため一握りの者にしかできない。
「たしかに、私が来た時はそのようなものは居なかったと認識しております。」
後ろから様子を伺っていたアリアからここにいた人間達の状況を教えてもらう。
「魔法使いが3人そして、そのほか全員が非魔法使いか。しかもその魔法使いも大した実力を持っていなかったと。」
エクステティアはそのまま、前龍王の記憶と、経験を読み取り一つの答えを導き出す。
「確実に裏でだれかが手を引いてるな、それも貴族の人間だな。」
「間違い無いでしょうな。」
全員が共通の認識を持っていた。
「さて、どうしようか?目の前に面白そうなものがあるが、リスクもそれなりにある。だが、このまま引き下がるのも癪だな。」
「旦那様、妾の愚考な発言をお許しください。」
エクステティアは話を続けるように促す。
「妾達は旦那様に絶対の忠誠と服従を捧げております。ですので、妾達に何もご遠慮なさらないでください。旦那様のどんな命令、望みでも旦那様の満足のいく結果をご覧に入れましょう。」
ネフェリ達は一糸乱れぬ動きで、膝をつき顔を上げ全員がエクステティアに絶対の忠誠と服従の意思を表す。
「ははっ、そうか、それは頼もしいな。」
エクステティアの口角は不思議と上に上がっていた。そして命令をだす。
「ならば俺について来い。そして俺の願いを叶えてくれ。」
「「「「「御身の望むがままに」」」」」
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