第14話 悲惨
『地獄』 今この状況を一言で表すことができるのはただそれだけだった。地面に寝そべり高笑いしている者。狂気に満ちた顔で部屋の中を走り回っている者。叫び、喚き、人の狂気と、懺悔が音になって部屋中に響いている。その中で一人楽しそうに鼻歌を口ずさんでいる者がいた。
「今の状態を説明してくれないかアリア。」
エクステティア一行は長い地下を通り抜け目的地に辿り着いたのだが、先にアリアが居て。さらには、部屋の中が悲惨な状態になっていた。
「はい、主様の道を阻む者の排除に取り掛かるためこの一室にいた人間どもを話し合いで排除しようと試みました。しかし、敵対意志が見られたので脅そうと威嚇したところ思った以上に人間が脆くこの状態になってしまいました。」
言い訳をするようなそぶりもなく、その真剣な表情と、沢山の死体と呻き声を上げている一室でも損なわない可憐さが、信憑性を高めていた。
(ん?何言ってんだコイツ?それでそこまでするか?えっと、とりあえず俺のためにしてくれたってことで良いのか?これ。)
「そうか、それはご苦労だった。ありがとう。」
エクステティアはアリアにねぎらいの言葉をかけ、部屋の全体を見渡す。
(この状況でも何も思わない。身体どころか、価値観や心の状態もが、かけ離れてしまったか。)
普通の常識と、価値観を持っている日本人ならばこの状況を見れば様々な嫌悪感を抱き、そして地獄を作り出した張本人に無数の批難や罵倒を叫び続けていただろう。しかし、ここではそんな常識や、価値観を持っているものなどいない。こんなものは見慣れている部類で、逆に非難をあびせられた場合全員がコイツは過保護に育てられたなと、そう思うだけだであった。ここでは命の価値は軽く、弱肉強食が世のことわりであるため、エクステティアもこう思うだけだった。
「たけど、ちょっとうるさいかな。」
そう、ちょっと、ほんの少しだけうるさいと思っただけであって、この状況をどうにかしてほしいという気持ちは本人には全くなかった。しかし、この言葉を聴きこぼすもしくは独り言だとスルーする物はこの場に居ない。我らが主、我らが王が、ほんの少しでもそう思って口にしたのであれば、それを叶えるのが従僕な
「「「「「御身のままに」」」」」
そこから5名の迅速な対応が始まった。まず、マルコ、ネフェリそしてコーネリアの3名が習得している殺傷能力が極めて高い技で室内でまだ息をしている人間に一撃でとどめをさす。その後アロの影が床全体に広がると、転がっている死体を飲み込み処理をしていく。最後にアリアが手をかざすと、光が綿毛のように舞い、壁や床にこびりついた汚れを浄化する。
「え?」
エクステティアの困惑をよそにアリアが勢いよく頭下げる。
「た、大変申し訳ございません、主様。我々と言う存在がありながら御身の心の状態を察する事ができず、主様に不快な思いをさせてしまいました。配下としてあるまじき行為でした。この罪は一生を……」
「だ、大丈夫だ。問題ない。本当に問題ないから大丈夫だ。だから頭を上げてくれ。」
エクステティアは頭を抱える。
(あんなちょっとした一言でこんなに働くのか?今後気をつけないと何するかわからん。)
エクステティアは、『しかし』、『ですが』と、言い出すアリアに『大丈夫』だと言い聞かせ、一生終わらない言い争いが始まった。しかし最終的にアロに逆に諌められエクステティアがおれる形で終わった。
「分かった。お前の罪は後々償わせる事にしよう。」
「承知しました。この身朽ちるまで主様のお役に立てるよう精進して参ります。」
「ああ、期待してるよ。」
少しずつだが意識を変え自分の配下達に自から歩み寄っていこうと決心した瞬間でもあった。
「ご主人様少しよろしいでしょうか?」
「どうした?」
そんな時アロからの報告があった。
「それは本当か?」
「はい、そこには少し不思議なものが、」
「そうか、報告有難う。」
エクステティアはゆっくりと目を閉じ思考を駆け巡らせる。考えがまとめ終わり目を開くと全員が目の前で跪いている状態だった。
「全員、耳を傾けろ。この後戦闘になる可能性がある、各自すぐに戦えるように備えておけ。」
ここにいる全員がエクステティアの声を聞きその緊急性を感じ取る。
「「「「「かしこまりました」」」」」
この瞬間命が揺れている気がした
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