第12話 地下の経路

 「どっかいっちゃった……」


 エクステティアは男が走り去っていった方向を見つめながら呟いた。


(も、もしかして剣折ったの怒ってるのか?ほんとはあの時避けるつもりだったのにタイミングずれて肩にあたって折れたんだよな。しかもその後『何か?』って、とぼけちゃったしあれは確実に怒ってるな、さっきの人) 


 自分から走りながら遠ざかって行く男を見ながら的外れなことを考えているエクステティアはここに来た目的を思い出し、爆発の影響で原型も留めてない扉に足を向ける。


「ここにはいるはずなんだよな。」


 部屋の中に入ろうとした時、頭上で声かした。


「お待ち下さいご主人様。」


 エクステティアは、男と一悶着ある前に魔法を使い仲間達に伝言メッセージを伝えていた。それを受け取った忠実な下僕は、自分自身のあるじの前に馳せ参じたのだ。


「お、一番乗りはアロか、意外と早かったな。」

「お待たせしまって申し訳ございません。今、この部屋にお一人でお入りになろうとしたご様子。ですが、この先何かがあった場合我々がご主人様の盾になりお守りすることができません。なので私を先頭にご主人様はわたくしの後ろに。」

「わ、わかった。」


 自分の主人さえも引くほどの勢いを見せたアロはあるじ先に部屋の中へ入った。その後に、案内されるような形でアロについくて行く。部屋の中は最低限の家具があるだけで殺風景な室内となっており、唯一、一輪の花が描かれた油絵が飾られているのみだった。


「向日葵……?」


 その絵に近づいて見てると、白い瓶に一輪の大きな向日葵が下を向いていた。それに釣られるように下を見ると棚があるだけ。


(棚しかないが…ん?これは?)


 エクステティアは盗み聞きするように壁にに耳を当てる。そして何かを確認をすると壁から一歩離れ壁に殴りかかる。そこにアロから思わぬ言葉か出てきた。


「ご主人様‼︎おやめください!」

「ど、どうした?アロ」


 止められると思っていなかったエクステティアは、同然の疑問を投げた。


「先程もお話ししたようになにがあるか分かりません。このような場合私のような下のものにお任せください。」


 アロは、壁の前に立ち細く息を吸うと壁に向かって回し蹴りをかまし、そこを起点にヒビが走る。パラパラと乾いた音を立てながら崩れて人一人分入れる竪穴が出来上がった。


「これは、これは」


 エクステティアは興味深そうに穴の先を見た。そこには地下へ繋がる階段があった。


「ご主人様この階段は…」

「あぁ、大正解みたいだ。せっかくだ、下へ降りてみよう。」

「ご主人様愚考ながら進言いたします、ここは他の者達を待つべきだと思います。この暗さは私の魔法で対処することができますが、どうも死角が多いようです、なのでここは…」

「あぁ分かったここはみんなを待とう。全くアロは心配性だな。」


 アロの進言を聞き待つことほんの数秒。エクステティアが伝言メッセージを伝えた全員が集まった。そして全員がエクステティアを自然に囲む。円の中心になった人物は戸惑いながらもその円から出ようとする。しかし一歩進むと周りも一緒に歩く。


「そ、そんなに厳重体制じゃなくてもおれは大丈夫だって、みんなも心配しすぎだ。」

「いえ、オヤジこそご心配なく俺たちが命に変えても守りいたします!」

「いや、だからそんな簡単におれは……」

「それでも"もしも"というのがあります。なので旦那様は、いつも通り優雅にお進みください。」

「あ、はい」


 エクステティアは配下たちの言われるがままに階段を降りる。階段は螺旋状に続き石造りの壁がしばらく続くだが、しばらくすると鉄製の黒い扉が見えてきた。エクステティアは眉を顰め不快を表す。先頭を進んでいたマルコも、扉の存在を視認し扉を開ける。


「まて、マルコ俺が開ける。」

「ですが、この先…」

「俺が開ける。」

「わ、分かり、ました……」

 

 エクステティアは、不快感を露わにしながらドアの前に立つと扉を殴りつけた。鉄製の扉は龍の力技に耐えられず蹴られた方向に飛んでいき、そのまま壁にぶつかった。すると煙立つ先で男の声がした。声がすると同時に後ろに控えていた竜王の配下達が自分の主を守るため前に出る。


「いや〜コワイコワイ」

「何者です!」

「ここの護衛をしてるユーグと言う者ですが、仕事上こうも簡単に侵入されると今後に影響が出るですよ。お引き取り願いませんか?」


ユーグと名乗る者は紺色のコートに灰色のダンディーハットを被り、腰にレイピアを携えており、その立ち振る舞いは隙がなく熟練の剣士を思わせるものだった。それを見たエクステティアは質問を投げる。


「貴様はここの護衛をしているな?この地下でなにが行われているのか知っているか?」

「いやいや、知りませんよそんなこと。依頼主には何も見るな、なにも触れるなと言われているので。」


 エクステティアとユーグが見つめ合い無言の間が続いた。ユーグ被っているダンディーハットを深く被り直し後ろを向く。


「ど、どうも私は貴方には絶対に勝てないみたいです。死にたくないのでここはなにも見なかった事にしましょう。さ、さぁ先を急いで下さい。」

「ありがとう恩にきる」


 ユーグに先を急かされ、奥へと続く廊下を走る。


(あぁ近づけば近づくほど分かってしまう。胸糞悪い)


「クソが」

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