第11話 噛ませ犬の末路

 〜〜〜"デスソード"視点〜〜〜


「どぉしたぁ?俺様の名前を聞いてちびっちまったか?」

「‥‥」

「はっ、図星みたいだな。このまま死んじまえ!」


 持っていた大剣を右へ左へと大きく振る。しかし、相手には軽々と避けられ一太刀もあびせられない。


(ほう、この俺様の猛撃に耐えるか‥なかなかやるじゃないか。)


「よく俺様の攻撃に耐えたな。だが、これならどうだ!」


 男は上段に大剣を構える。力を両腕に力一杯に込め、男は"当たる"そう確信して

 大剣を振り下ろす。しかし、紙一重の所で躱されてしまい、行き場を無くした大剣はそのまま折れてしまっていた。目の前に立っている男は何事もなかったようにそしてゆっくりとこちらを向きこう言い放った。


「なにか?」


 この一言は男を激情させた。


(俺様のあの一撃を避けて"なにか?"だと?ふざけるのも大概にしろよ。一回避けただけでいい気になってんじゃねぇよ。どっかのボンボンんかしらねえがもう容赦しねぇ、絶対にぶっ殺してやる。)


『フレイムランス』


(この魔法は、俺様が今出せる最大の技。この魔法で今まで俺様のことを馬鹿にして来た同業者の野郎どもも、ずっと見下して来たあの貴族のアホ達でさえも、全て焼き殺して来た。だからあのすまし顔の野郎も、なんの抵抗もなく無惨に殺されるはすだ。)


 男は胸の前に手をかざし必ず目の前の敵を殺すという思いと一緒に、ありったけの魔素を魔力で込める。すると握り拳ほどの火が胸元に出現した。その火はどんどん膨張していき手のひらに収まりきれないほど大きくなると、太古に君臨した王者の太くそして鋭い牙を彷彿とさせる槍に変形していく。


「貴様、この俺様を怒らせたことを後悔させてやる。この魔法でな。死に晒せぇ!」


 男の邪念を最大に込めた火の槍を目の前の男むけて放つ。相手を焼き焦がすその瞬間。


『シュッ』


 小さな音をたて火が一瞬にして消えた。本来であれば先程放った魔法は、轟音をたて相手を焼き殺しているはず。しかし今起きているのは目の前の男が優然とたち、右手を見つめているだけであった。 


「消えてしまった…」


 一瞬で理解した、いや理解させられた。自分と相手では強さの次元が違う。そして自分は命の手綱を握られているのだと。男は相手に背を向け一目散に逃げ出した。


(あれはなんだ⁉︎俺の魔法を片手でただ掴んだどころじゃない、あいつはかき消しやがった!なんなんだあれは。あんなの人間業じゃない。あいつは化け物だ、もしくは違うなにかだ。)


 男は逃げるどこまででも逃げる。しかし人は死の運命から逃れられないように死の象徴からも逃げられない。


「っ…化け物め」




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