初心者さん襲来!§6 正体
『王の手』
魔法に関する災害・事件・犯罪に対処する専門家集団。
高度に発達した魔法文明を維持する為の存在。
この『五族連合』の事実上の盟主である『ウェラン王国連合』にも存在する。
それが内務省直轄の特務機関『王の手』だ。
『暗黒時代』を終わらせた英雄王アルトゥール28世の命により設立され、内務卿レニオール・ウェルファラジオールによって率いられるこの特務機関に、ソフィア・リンデル・フェレンディルも所属していた。
って、ちょぉっと!長い!ながい!
急にナレーション風だし!
でもそうなんです。
受付さんの正体は、特務機関『王の手』の
設定盛り過ぎですか?
だって、冒険者ギルドの通常業務だけだと、いずれネタ切れになっちゃうでしょう。
きっとネタ切れにしない為の作者の配慮ですよ。
お話進めましょう。
「さあ観念して下さいねー」
柔らかな物腰で、
ローブさん、避けちゃいましたけど、ちょび髭さんをかすめます。
重い
「ひぃいっ!おたすけをっ!」
とちょび髭さん。反応がいちいちベタすぎませんか?
ひらりとはかわさず、同じ
「なかなかやりますね、あなた」
「貴様もだ!娘!」
一方では、フードさんが呪文の詠唱を始めてます。ちょっと不味いですね。
「う、俺は一体?」
「なにこれ?どういう状況?」
初心者さんお二人が正気に戻った様です。
状況から察するに、フードさんの精神支配は、精神集中を必要とするものなのでしょう。未知の呪文か
「逃げてくださーい。お二人さん。あなた方には荷が重すぎます」
初心者さんですから。
生存率低いですから。
変にカッコつけて、命を無駄にしないで下さい。
「「??!」」
状況判断が出来てない感じです。
大丈夫でしょうか、この2人。
フードさんの呪文、召喚魔法のようです。
もうすぐ詠唱が終わりそうです。
既に魔法陣から骨の腕が何本も見えています。
たくさんいそうですね。
その刹那、矢が飛来し、フードさんにクリーンヒットします。
詠唱がキャンセルされます。
「ぐっ!」
路地裏を通ってやってきたのは見知った凄腕さんでした。
「サラディオールさん!」
満面の笑顔のわたし。
長弓を放り、
「様子がおかしかったので、追いかけてきた。この路地、認識阻害の魔法がかけられている」
マジですか?どうりで。
「援軍か!面白い!」
どことなく楽しげな
これって「強敵」と書いて「とも」と呼ぶあれですか?そうですか。
「小癪な…」
対して、フードさんは不満のご様子。
走り寄るサラディオールさん。
受けてたつ構えの
牽制するわたし。
初心者さん2人は…
何やってるんでしょう!早く逃げて下さい!
フードさんが再び呪文の詠唱をはじめます。
短い詠唱でした。
淡く輝く
物理回避が困難とされるけっこうやばいやつです。
1本ではありません。1、2、3、4、5、6、7…
え?7本?多くありません?
不味いですね。
初心者さん狙われたら、人生から一発退場です。
言うより先に脚が動き、フードさんに襲いかかろうとするわたし。
しかし
わたしの狙いを察知してくれたサラディオールさんが代わりに襲いかかります。
ドス!ドス!ドス!ドス!ドス!ドス!ドス!
回避困難な7本の矢がサラディオールさんに突き刺さります。
「やだ!」
悲壮な叫びをあげるわたし。
膝を付き、今にも崩れ落ちそうなサラディオールさん。
「ふははは!」
不敵な笑いのフードさん。この人嫌いです。
悲壮感漂う現場の空気。
かわすわたし。
お返しの強打。当たるが致命には至りません。
不意に動き出すサラディオールさん。
強烈な一撃をフードさんに食らわします。
「「「「!?!」」」」
崩れ落ちる動作は、かなり大胆なフェイントでした。
魔法使い相手なので通じたのでしょう。
近接物理なら止めるの一撃が来ていたでしょう。
ホントに心配させないで下さい!
フードさんのフードがはだけて、素顔が露わになります。
素顔?といっていいのでしょうか?
異形の姿、とも言い難いその姿は奇妙なものでした。
深い暗闇のモヤみたいな身体。
赤暗い輝きを放つ無数の目の様な何か。
人ではありません。
「名も無き魔神王の眷属『百眼』?」
物騒な名称が出て来ましたねー。
「もう半世紀以上も前に討伐されたのでは?」
「いや…『百眼』だけは確実な討伐が確認されていない」
「これ一体どういう状況じゃ?」
その時ドトンタ翁たちが警備隊を引き連れてやってきました。
「不埒な
上から目線で捨て台詞を宣う元フードさん。
すると呪文の詠唱も無しに一瞬で空間の抜け道が出現します。
元フードさん、退却です。
ちょび髭さんはと言うとこっそり逃げ出そうとしている所を警備隊に見咎められます。
「あっしは関係ございませんぜ!旦那方!たまたま居合わせただけなんでげす!」
見苦しいなあ。
事後処理が進みます。
地元の監察局所属の魔法捜査官たちも駆けつけます。
かなり大事になってしまいましたね。
北門広場のベンチ。
戦いの疲れを癒すわたしとサラディオールさん。
しばし無言。
誰ですか?いい歳してウブいとか言ってるの?
「ソフィアさん、あまり無茶しないでくれよな…心配になるから」
見つめるわたし。見つめかえす彼。
まじまじと見つめて顔を近づけるわたし。
「んー?」
赤らむ彼。
「…だって幼馴染だろ」
「それだけー?」
しばしの無言、再び。
その時、お邪魔虫さんたちの声が…
全く、この二人ときたら!
騒動の発端となった二人の新人冒険者が駆け寄ってきます。
「お見それしました!お二方!」
「ご迷惑かけてごめんなさい!」
「「……」」
どうしましょ。
「お兄さん!お名前をお聞かせ下さい!そして弟子にして下さい!」
「ん?俺か?」
「そうです!」
「俺の名はサラディオール・ウェルファラジオール。『荒野の羊飼い』所属のレンジャーだ。
あと弟子入りは断る」
「そんなあ」
「ダメですよー。サラディオールさん困ってるじゃ無いですかー」
なだめるわたし。微笑んでますよ。
「お姉さん!昼間はいろいろ失礼な事言ってごめんなさい!」
失礼だとは認識してたんですねー。
気にしてたんですねー。
「お姉さんはツンデレなんかじゃないです!真正です!」
「はぁっ!?」
微笑むわたし。微笑んでますよ。微笑んでますって!
気配を察知した二人。
ガクガクと震える二人。
膝をつき、首を垂れ、跪き、土下座する二人。
その姿は、まるで服従する飼い犬のようでした。
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