初心者さん襲来!§5 正体不明

 初心者さん2人は、ちょび髭さんに誘われるまま、いかにも怪しい路地裏へ入って行きます。

 こんな所にこんな路地裏ありましたっけ?

 あったんでしょうねー。

 路地裏を進むと、建物の合間の広い空き地に出ます。


 いかにも怪しいフード付きローブの男と会っています。

 おや二人の様子がおかしいですね。

 魅了チャームでしょうか?

 呪文を唱えた様子がありません。

 何か魔法の品マジックアイテム超常の力サイオニクスでしょうか。厄介です。

 ですが、精神系はこちらも対策済みです。受付さんですから。


「そこまでです!」

 割って入るわたし。


 不意を突かれてびっくっとするちょび髭さん。

 ローブの男は動じません。

 フードを被っているので顔を確認出来ません。

 哀れなお二人は目が虚ろです。

 この症状は魅了チャームではないですね。

 もっと強力な支配です。魔法犯罪ですね。現行犯です。


「冒険者ギルドの受付さんじゃないですか。驚かさないでくだせえ。

 こちらの新人さんたちに私的な依頼をさせて頂いてた所でして…」


「精神支配系の魔法又は力は犯罪ですよ。そちらのフードのお方」


 ちょび髭さんは、怖気付いている様です。

 フードさん、聞く耳持たずで、笑ってます。

 外国の方でしょうか?


「精神支配解いて頂けませんか?」


 まだ笑ってます。

 それにしても、この胸のムカムカ感。何でしょうね。

 食後ですからね。仕方がありません。


 突然、強い衝撃を受けて身体が吹っ飛びます。

 ホントに突然です。

 わたしを吹っ飛ばしたのは大剣クレイモアでした。

 峰打ちではありません。直撃です。

 壁に激突して、そのまま倒れ伏します。


 油断していた訳ではないんです。

 事前に幾つかの防御系魔法をかけておきました。

 ですが、伏兵には気付きませんでした。

 それは大剣クレイモアを携えた甲冑プレートメイルの戦士でした。


「ざまあ!」

 嬉しそうに叫ぶちょび髭さん。

 この人は…何と言ったらいいんでしょう…「悪人」という言葉が、実に似合う御仁ですね。


「小娘が!調子に乗らなければ、こんな目に遭わずにすんだものを!」


「げへへ死んじゃいましたかねえ!」

 下卑た笑いを浮かべながら、のたまうちょび髭さん。


「肉を切った感覚が無い。魔法で防御したな?小娘」


 流石に戦士さんにはバレてますねー。

 フードさんが無言なのも気になります。


「バレてましたか。血出てませんしね」

 ムクリと起き上がるわたし。


「だが一時凌ぎに過ぎまい。次は防げるかな?」


「流石に不利そうなので、わたしも武器を出して宜しいですか?」

 不敵な提案をするわたし。


「良かろう。せいぜい足掻いてみるがいい」


「ありがとうございます。見かけによらず紳士なんですね」

 微笑むわたし。


「なーに余裕ぶっこいてんだ!魔法使いの分際でが!」

 イキがるちょび髭。

 ちょっと、もう黙っててくれないかなあ…


「…それは私に対する言葉と受け取ってよいか?」

 かすれた声でうめく様に喋るフードさん。


「滅相もありません!」

 怯えるちょび髭。

 うっかりフードさんの名前洩らすの期待したんですけど、流石に都合良過ぎましたね。


 その間に、なんでも鞄ハンマースペースから、武器を取り出します。

 こう見えても得意なエモノが幾つかありますが、今回はこちらにしておきましょう。


 大剣クレイモア


 取り出した武器を構えます。


「「「?!?」」」


「ちょ…まって」

 狼狽えるちょび髭。想定外だった模様です。

 まあ普通そうです。

 せいぜい怯えてくださいな。


「ただの小娘ではないな!何者だ!」

 甲冑プレートメイルさんは、割と冷静。

 既に大剣クレイモアを構えています。


「わたしですか?冒険者ギルドの受付さんですよー」

 牽制するわたし。


「ギルド職員の小娘が、大剣クレイモアを軽々持ち上げれるものか!」


 甲冑プレートメイルさんの上段からの一撃。

 受け流すわたし。


「あまり知られちゃいけないんですけど、知りたいですか?知ったら捕まって貰う事になりますよ?」


「笑止千万!」


 大剣クレイモア同士の剣劇の最中、フードさんが気付いた様です。


「…そうか!貴様『王の手』だな!」

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