初心者さん襲来!§4 鼓動

「ねえサラディエル君、こちらはどなた?」

 上エルフの女性です。美人ですね…


「ギルド職員のソフィア・リンデル・フェレンディルさんです」

 フルネームで紹介されちゃいました。


「ソフィア嬢、ひさしぶりじゃの」

 このノームのお爺ちゃんはドトンタ・ポコンタ・ペコリンタさん。気さくな方ですが、けっこう偉い方でもあります。


「ええ、お久しぶりですね。ドトンタ翁。王都以来ですわ」


「こちらは、依頼人のエレンディエル・ディングルン・タナンサさん」


「ソフィーエルちゃんね!よろしくね」

 微笑むエレンディルさん。

 ソフィーエルじゃなくてソフィアなんですけど、エルフ流ですねー。


「こちらこそよろしくお願いします」

 微笑むわたし。


「そして、こちらが…」


「ウォルフガング・シュナイデルじゃ。ドウォレル王国より参った」

 ドウォレル王国とは、『五族連合』を構成するドワーフの国です。


「まあ、お掛けになって。お食事ご一緒しましょうよ」


「そうでうか。ではお言葉に甘えさせて頂きます」


 何やってるんでしょうね?わたし。

 何って…仕事に決まってるじゃないですか!


「それでお伺いしましたのはですね、お預かりしたお品の件でして…」


 話を続けます。


「こちらで査定させていただいた所、かなりの高額になります。手数料など差し引かさせていただいても充分な余剰が出来ますので…」


「なるほど、お釣りがくるんじゃの」ドトンタさん。


「有り体に申し上げると、そうなります」


「ほらね、エレンディエルさん。多過ぎるって言ったでしょ」とサラディオールさん。


「じゃのう」と続けるドトンタ翁。


「そうなのー?」


「はい、余剰分は後日返還させて頂きます」


「分かったわ。じゃあソフィーエルちゃんも何か注文して下さいな。お会計は気にしないで」


「では…」


 いっぱい注文しちゃいました。

 スイーツ!美味しい!


 それにしてもこの胸の高鳴り、激しくなる心臓の鼓動。何でしょうね?

 心臓病?だとしたら大変です。

 あがり症?違いますよ。受付さんですよ。業務に支障でます。

 不思議ですねー。


 なんだか上の空でいると、誰か話しかけてきましたね。


「ようソフィアちゃん、来ないと思ったらこっちにいたのかい」

 ガランディールさんです。


「はいー」

 微笑むわたし。


「俺はもう帰るが、アイツら奥の卓にまだいる。良かったら声を掛けてやってくれ」


「ガランディールさん、明日は早番でしたねー」


 ガランディールさんは、サラディオールさんたちとも少し話すと帰って行きました。


 それにしても暑いですね、ここ。

 顔が赤くなってるですって?

 暑いですから、仕方ないです。


 ドトンタ翁がウンブラ州の歴史を話しています。

 今回の依頼人の目的地です。

 『暗黒時代』の傷跡が深く、この辺りに比べると、危険度の高い地域です。


 何気にオープンテラスを見渡します。


 あれ?

 プルチーノさんとシャオチーさんですね。

 しかも例のちょび髭さんと一緒です。

 お店を出てどこかへ行く様です。

 何やってるんでしょう?あの子たち。

 ガランディールさんいないと何も出来ないんですか?

 経験から学べないんでしょうか?

 まったく!


「急用を思い出しましたので、お先に失礼させて頂きます。ご馳走様でございました」


 追いかけます!

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