冒険者ギルドの受付さん(ドラフト版)(その8)

 チャントスルノーラ夫人の話は本当に長いです。

 無言で黙々とお付き合いする執事のヨーゼフさん立派です。


「…そうしたらねー、スフォルザ子爵夫人が言うのよー…ねえ?聞いてる?ソフィアちゃん」


「もちろんですよ。それでスフォルザ夫人は何とおっしゃったんですの?」


 微笑むわたし。優雅な午後ティー。素敵ですね!


 大きなノッポの振り子時計の雄鶏が、三度鳴きます。


「あらあら。もうこんな時間ねー。そろそろ見つかったかしら。

 ソフィアちゃん、貴女も一緒に見にいきましょう」


 わたしも行くの前提なんですか?

 見聞役!という事で、ありでしょう。

 さぼるな!ですって?

 嫌ですねー。仕事の一環ですって。


 テキパキとティーセットを片付けて、なんでも鞄ホールディングバッグに仕舞うヨーゼフさん。

 手際良いです。


「見聞役行ってきます!」


「はーい。行ってらっしゃーい」


 他の職員に告げると、夫人一行に同行するのでした。


***************************


 駆け抜けるミケ。

 追うサラディオール。

 続いてメイドのツンデリア嬢。

 顔芸状態のジョナサン。

 猫フレンズの皆さん。

 そして、群れるウミネコたち。

 少し遅れてガランディールのおっさん。

 

 騒ぎに気付いて、囃し立てる港の漁師たち。

 呆れる港湾労働者たち。


 行ったり来たりのミケに合わせて、パレードも行ったり来たり。

 疲れて漁師たちの酒盛りに紛れ込むガランディール。


「ホントどうすんだよ、これ」

「ほら、ガランも呑みな」

「お、おう」


 桟橋へ向かうミケ、続くパレード。

 と見せかけて、Uターンするミケ。

 察知したサラディオールとツンデリア。

 勢いよくドボンするジョナサン。

 群がるウミネコたち。

 四散する猫フレンズ。


 コンマ数秒悩み、ジョナサンを引き揚げるサラディオール。

 舌打ちしながら、冷たい視線をジョナサンに向けるツンデリア。

 再び走り出すサラディオールとツンデリア。


 放置されるジョナサン。

 群がるウミネコたち。


「ジョナサンのやつ、散々だな」


***************************


 内壁門を通過して港湾部にやってまいりました。


 猫さん見つかるといいですねー。


 おや、あちらから何かやってきますね。


 猫さん!とサラディオールさんにメイドさん。

 鬼ごっこですか?


「にゃあああ!奥さまの匂いにゃん!いたにゃん!」


 やってきた猫さんが、夫人を駆け上ります。

 抱き抱える夫人。


 無事、解決したようです!

 良かったですね!


「あらあら、ミーちゃん。おかえりなさい」


 呼吸が荒くなってるものの、息切れはしてないサラディオールさんとメイドさん。訓練されてますねー。


「二人ともご苦労さまー。大変だったでしょー」

 労う夫人。


「ええ、まあ…」


「サラディオールさん、任務完了ですね。お疲れ様です。

 では夫人、こちらにサインを」


 淡々と事務処理をこなすわたし。

 ほらね、ちゃんと仕事してるでしょ。


 その間、猫籠に猫さんを戻すメイドさん。

 猫さん、大人しくしてて下さいね。


「ミーちゃんも戻った事だし、皆さんで晩御飯にしましょう。

 ソフィアちゃん、サラディオール君、いらっしゃいな」


「あ、はい」

「お言葉に甘えさせて頂きます。ただ、その前に依頼人のとこへ報告行かせて下さい」


「あらそうね。じゃあ、サラディオール君は後で合流してね。

 さっきお会いしたカフェの隣のお店よ。

 名前は『雄鶏の憂鬱亭』ね」


 そこへ、走ってくるジョナサンさん。


「ゼーハーゼーハー」

 息切れしてますねー。


「あらあら、こちらの坊やはどちら様かしら?」


 坊やではなく小人族なんとかリングなんですけど、ややこしくなりそうなので流します。


「冒険者のジョナサン・ティンカーフッドさんです。

 彼も捜索のお手伝いして下さったんですよ」


「あらーそうなのー!じゃあ、あなたもいらっしゃいな、晩御飯ご馳走しますよ。


「え?依頼人さん?喜んで!」


「スフォルザ夫人に伺った、美味しそうな鳥料理のお店があるのよー。皆さんご招待しますからね。

 服装は気にしなくていいの。ぜひいらしてね」


 ミケが大きな鳴き声を上げた。


 サラディオールだけがミケの心情を察していた。


TBC

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