冒険者ギルドの受付さん(ドラフト版)(その7)

「今、仕事中な。こちらは依頼人のとこの使用人、ツンデリア嬢」

 深々と頭を下げて挨拶するメイド服の女性。


「あ、そうなの」


 からかってやるつもりが、出鼻から挫かれちまった。

 なんだよ、依頼人かよ。つまらんなあ。

 俺も一端いっぱしのギルド職員だ。邪魔はしないでおく。

 にしても何の依頼だあ?


「ガランのおっちゃんこそ、何やっとるん?釣り?」


「おうよ!今日は休暇をとって、釣り三昧よ。

 …それで何の依頼なん。

 ギルド職員として出来る事があれば、手伝っても良いぞ」


「「………」」


「?」


「猫探しの依頼を…」


「んなっ!?まさか本当に出たのかっ!?あの伝説の!!」


「あ、うん」


「そうか、そいつは……大変だな…」


「「「………」」」


***************************


 チャントスルノーラ夫人の話は長いですね〜。


 わたしです!わたし!

 冒険者ギルドの受付さん、ソフィアさんです!


 今は受付業務を離れて、応接スペースで、優雅に午後のシエスタを嗜んでます。


 え?さぼるな!ですって?


 違いますよ。接客ですよ、接客。依頼人のお話相手も仕事の範囲なんですよ。


「…それでね、御者さんが言うにはねー…ねえちょっと。ソフィアちゃん聞いてるー?」


「もちろんですわ」


 それにしても、夫人のお話は長いですね〜。


***************************


 ジョナサン・ティンカーフッドは猫まみれになっていた。


 猫!猫!猫!ねこ!ねこ!ねこ!ぬこ!こねこ!

 猫だらけ!猫まみれ!


 猫を集めようとして、手持ちの糧食レーションからいろんな肉類をばら撒いた所までは良かったんだ。

 生ハムやらソーセージやらベーコンやら干し魚やら…

 調子に乗ってばら撒き過ぎたのがいけなかったと思う。


 来るわ来るわで、集まりすぎ!

 ニャーニャーうるさい上、やたらと纏わりつかれて…


 あれ?なんか和むぞ。


 これ何?ああ、なんか幸せ!


 と、その時!一匹の猫が通りすがる!


 む?こいつは!

 お目当ての猫と特徴が一致するぞ。


 見つけた!

 こいつに違いない!


 ゆっくりと近づこうとする…

 おいこら、お前らまとわりつくなよ。

 可愛いじゃないか。


 はっ?


 通りすがりの猫と目が合う。


「………」


 キシャーーー!!


「あ!待って!」


 急いで追いかける。

 まとわりついていた猫フレンズも一斉に走りだす。


 猫の大行進の始まりだった。


***************************


 サラディオールたちはマグロ解体場まで来ていた。

 ガランディールもついてきている。


 解体場を駆け回る一匹の猫。

 尾短かの三毛猫。


「いましたわ!ミケさんです!」


「いたな」


「よかったじゃねえか」


「ミケさんの好物、マグロの薄片の油漬けです。

 サラディオール様、こちらをお使い下さい」


 ツンデリアから瓶詰めのマグロフレークを受け取る。

 つかつかと近づき、ツナフレークを取り出す。


「よう、ミケ、久しぶり」


「サラディオールの旦那じゃなかとですにゃ。

 こぎゃんところでなんばしよっとですかにゃ」


「なんで逃げ出したん?ほらツナフレークあるぞ」


「にゃああ!ツナにゃ!うまいにゃ。

 波止場に、あいつらいたにゃ。苦手にゃ」


「あいつら?」


「あいつらにゃ!羽毛の生えた嘴のある奴らにゃ。

 ツナうまうま。

 あいつら突くから嫌いにゃ」


 カモメか?ウミネコか?それともカラスか?

 港だもんなあ。漁港あるしなあ。


「なるほど。んじゃ、そろそろ帰るか」


「そうするにゃ。ん!ツンデリア嬢もいるにゃん。おひさにゃん」


「ミケさん、心配しましたよ」

 ツンデリアの言葉はミケには理解出来なかったが、ニュアンスは伝わったようだ。


 ミケはゴロゴロと喉を鳴らし、ツンデリア嬢に擦り寄るのだが…


 突如、こだまする何者かの奇声。


「うぎゃああああああ!」


「な!なんにゃ!?」


 全速力で走るジョナサン・ティンカーフッド。

 続く猫フレンズの群れ。


 そして、ウミネコの大群。


「「「「!!!」」」」


「みぎゃあああ!とりにゃ!逃げるにゃ!」


「あ、待って下さい!ミケさん!」


「待て!ミケ!」


「どーすんだこれ?!」


***************************


次回は、猫探し編終了?


お楽しみにね!

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