四ツ辻の黒犬 §4 罠
あれからずいぶん時が経つというのに、一向に日が沈む気配がない。
不思議に思う。
ざっと付近を散策する。
カザドールの話によると
どういう仕掛けなのかは聞いていない。
聞いても理解出来そうになかった。
魔法やエルフの遺跡に関する代物にしか思えなかったった。
一介の御者など完全に門外漢なのだ。
この土地もそういう土地なのだろうか?
「たっはぁぁ〜。母ちゃんに会いてえよぅ」
馬たちのそばで屁垂れ込んだ。
ロシナンテがヒヒンと鳴いた。
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「カザドールさんよ、俺は早くウチに帰って女房、子どもに会いたいんだが…」
「奴らは、まだ去ってはおらぬ」
「遠吠え聞こえませんがねぇ」
「お前が入ってきた
奇妙な表現だった。
方言だろうか?
土地によって、言葉の意味が変わる事がある。
「
「この土地、
ここの地名が判明したが、聞いたことがない地名だ。
「それでコムジオール市まで戻るには、どうすれば?」
「黒犬どもを、どうにかする他あるまい。あのべレクの眷属どもめ!主人が滅んでも尚彷徨いおって!」
べレクって、あの傭兵隊長べレクのことか?
怖いな。おい。
話を続ける。
「犬どもをどうにかするには、何か必要なんで?……戦うとか以外でですが…」
「うむ」
少し考え込むカザドール。
「奴らは強い匂いの草花を嫌う。天日干しなどして加工しておると尚良い…例えば
「近くの森では摘めないんで?」
「この辺りにはあまり生えぬのだ」
「うーん」
困った。
何か策はないのか。
このままでは今夜中に帰れなくなる。
「強い匂いであれば香辛料などでも効くはずだ。ナツメグやシナモンの様な…」
シナモン!
出掛けに諦めたカフェのことを思い出す。
「これなんてどうで?使えます?」
懐に忍ばせていたシナモンの棒を取り出す。
カザドールが答える。
「ああ!もちろんだ」
うおおおおお!やったぜ!これで帰れる。
その時はまだ疑問に思わなかったのだった。
大きな矛盾に。
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