彼岸 §3「ぬるっとしたぁあ!」
「え?死んだって?俺が??!生きてるじゃないか」
食い下がる俺。
「んーっとねぇ、何から説明すれば良いのかしら。」
「お兄さん、少し落ち着いて」
少年が興奮した俺をなだめようと、手を差し出す。
しかし身体に触れることなくすり抜ける。
「?!?」
「ぬるっとしたぁあ!」
更なる混乱。
突如、濃い霧の様な、煙の様な何かが俺の身体から沸き上がり始める。
「なっ?!」
「まずいわね。幽体を保てなくなってる」
「神父さん!早くこっち来て!」
神父さんと呼ばれた一番年長と思しき
神父さんは、俺の額に手をかざす。
そして古語で祈りの言葉を唱える。
すると身体から湧き出ていた煙が止まる。
煙の様な何かが急速に身体へと戻っていく。
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「俺が
「そういう呼び方もありますが…肉体を離れた魂と幽体というのがより正確な表現でして」
「安心して。
「善良な者の魂が、邪悪な
神父さんと黒髪の女性に説明を受けたが、いまいち実感がわかない。
「ここは
魔法使いがそう続ける。
岸辺でノームが釣り竿を振っている。
ふわふわとした
「幽体を失うと…ほら、あの様に魂だけとなりまして…」
夢か幻か、実感の沸かないまま話を続ける。
「……では貴方がたは一体どうやってここへ?」
「
この女性はさぞや高位の魔法使いなのだろう。
聞いたことはあっても、実際には見たこともない半ば伝説上の術だ。
流石「五族連合」と言ったところか。
「あまり気を落とさないで下さい。あちらの世界は良いところですので…それでは、そろそろあちらの手伝いに参ります」
そういうと、神父さんは魂釣りをするノームの方へ向かった。
懐から何かを取り出して短く何か唱えるとそれは投網になった。
魂を漁る投網だ。
まるで見たことがあるかの様な神父さんの台詞。
もしかしたら本当に見たことがあるのかもしれない。
いろいろ疑問に思うことはある。
考えあぐねていたところに女性が話を続ける。
「貴方たちの様な逸れた魂を保護するのが私たちが今回受けた依頼」
「保護…ですか…」
そんな依頼誰が出したんだろう。
いろいろありすぎて考えがまとまらない。
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どれほどかの時が過ぎたのだろう。
霧は晴れ遠くまで見渡せる。
岸辺から延々と続く
対岸は見えない。
起伏の少ない草地。まばらに生える樹木。
そして
ノームと神父さんによって保護される魂。
多くは
しかし、知った顔は見当たらなかった。
ジョン・スミス。あいつはどうなったのだろう。
手伝えることもなくただ呆然としている俺。
なんと情けないことか。
すると最初にあった少年の声が聞こえる。
「あ!来るよ!」
来るって何だ?敵か?それなら俺も少しは手伝える。
少年の声とほぼ同時に何人かの者たちが岸辺の方を向く。
そしてエルフたちの一人が叫ぶ。
「目視で確認。ハゲタカ型3、カエル型2、ナーガ型1。その他、雑魚の小羽根が十数体」
飛来する何者かが近づく。
緊張が走る。
にわかに慌ただしくなる。
漁られた魂たちとともに
このまま守られる側に回るのか?
嫌だ!
「俺にも戦わせてくれ!頼む!どなたか武器を貸してもらえないか!」
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