第49話 スペイン編⑤
「サッカーファンの皆様、お待たせしました!スペインリーグ【リーグ・エスパ】がまもなく開催されます!」
スタジアム、そしてパブやライブビューイング、自宅でこの日を待ちに待っていたファンが騒いでいる。
なにせ今大会は、久しぶりにリーグ・エスパでアランのプレーを見ることができるからだ。
「アランってそんなにすごいのか?」
傑の独り言にチームメイトはUMAでもみているかのような顔を向けてきた。
アランの凄さは、サッカーをよく知らない一般人でも「一番すごい人は誰?」と聞かれればその名前が出てくるほどに周知のものだと思っているからだ。
「スグル、マジで言ってんのか?」
「まあ、今までサッカーとは本当に縁がなかったから」
「マジかよ・・・・」
それからチームメイトは、アランはバロンドールに一番近いだの、足元がやばいだの、後ろに目がついてるだの、敵というより一ファンとして熱く語ってくれた。
「これはあまり目立たない方がいい気がするな・・・・」
傑としては、そのアランの影に隠れて黒子に徹した方がいい気がしていた。
もし名前が大勢に知られることになっても美咲さんたちがどうにかしてくれるはずだ。
「さあ、それでは今年のリーグ・エスパ、初戦を飾るチームの選手入場です!!」
アランが移籍したマドリーの控え室では。
「久しぶりだな、アラン!!」
「ああ、久しぶり」
アランは、久しぶりのチームメイトと再会の挨拶をしていた。
あまりの電撃移籍だったため、前チームへの違約金の支払いや、取材やらでチームへの合流が遅れてしまい、前日の夜遅くに宿舎に入った。
そのため、今日が移籍後初顔合わせの選手が多いのだ。
「お前、急にうちに来るなんてどうしたんだよ」
「ああ、それは・・・・・」
アランの言葉を聞いたチームメイトたちには、驚きと同時にこれから起こるであろう未来への期待に対する興奮が一気に押し寄せていた。
「ホント、楽しみだよ。アヤトくん」
「第一試合、マスフェルトVSマドリー、マスフェルトボールでキックオフです!!」
主審の笛と観客の歓声と同時に試合が始まった。
傑は、ボランチとしてパサーに徹するために常に空いたスペースを埋めるために動いている。そうすることで、相手選手が走り込んでくるスペースも、味方選手が判断に迷った時の逃げ道も確保していた。
「スグル!!」
早速、囲まれそうになった味方からボールを受け取る。
そこに、いち早く反応したのは、傑のことを知っていて、動きにも気づいていたアランだ。
「久しぶり、アヤトくん」
「・・・・今は、スグルですよ」
アヤトという名前を聞いただけで、5年前の関係者だと分かった。
年齢的にあの試合で相手チームに居たのだろう。
「ああ、ごめん。嬉しくてつい・・・・」
「今は、試合中ですよ」
「・・・・・・な!!」
アランは、油断なんてしてなかった。
世界一の選手などともてはやされようと、今目の前にいるのは自分の憧れであり、目標なのだ。
しかし・・・・・。
(ボールを蹴るまでが、ほぼノーモーション!?そんなの反応できるわけ・・・・)
「あなたが、あの時の俺を知っていようが、5年も前のこと。あの時とは、覚悟も環境も、何もかもが違う。だから・・・・」
”あの時以上だと思った方がいいですよ”
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