第34話 vsイラン③

「イランのキックオフで試合再開です!いやー、先程のゴールは劇的でしたね。あれだけ、厳しい状況からあれだけのボールが蹴れるとは」


「ですね。今大会のアジア勢は、ものすごい逸材が出てきましたよね」


「中国のヂィエ選手ですね?彼も、三条選手と同様に突然出てきましたからねー」


「はい。彼のプレースタイルも三条選手と似てますからね。おそらく同じような環境で育ったのではないかと思いますよ」


解説者のコメントは、的を射すぎていた。


「おーっと、これは危ない!!アーリーが絶妙すぎるパスを出してきた!!イランの攻撃は二枚、対して日本の守備も二枚!!」


「ここはどうにか、凌いでもらいたいっ」




左CBの飛鳥と左SBの綾瀬が、イランのFW二人に身構える。


(どうする。これは、流石に・・・・・)


飛鳥は、フランス戦でもなかった危機に焦っていた。



ボールホルダーが、飛鳥の方に向かって行く。

もう一人は、外から、綾瀬を引き連れながら中に入っていく。

飛鳥に向かっていたFWが、ゴールに背を向ける形で振り返った。


これには、飛鳥も綾瀬も反応が出遅れた。


「「え、後ろ!?」」


その先には、アーリーが走ってきていた。


アーリーのキック精度は、世界でも滅多に見ないほどの精度。

傑も最近その一人になっている。

すぐるほどの精度を持つ選手がフリーでゴール目掛けて蹴るとどうなるか。


答えは・・・・・、


「ゴーーール!!先制点から10分、同点に追いつかれたー!!」


「いやー、やっぱり彼もすごいですね〜。三条選手の後に全く同じコースに決めてくるとは・・・・」


「おそらくこれは、マンマークをやめてますかね?」


「ですね。マンマークをつけたところで止められないと思ったのでしょう。しかし、あれと同じ流れは通用しないだろうから、続けても有効だと思ったんですけどね」


いくら、傑でも、一度見せたものを何度も続けられるほどこのレベルは優しくない。

傑もそれを分かっていた。そしてイラン側も、最初に取った策である、パスコースの封じ込め。とにかく傑にボールを触らせない、というのを徹底的にやり始めた。


「さあ、前半アディショナルタイムは1分。非常に、前半はファウルが少なかったですからね。ここは、落ち着いて終わりたいですね」


「あっと、三条選手に渡った!!」


傑は、前半の最後に印象をつけさせようと、思いっきりロングシュートを放った。

40Mほど離れた位置からの弾丸シュートは、ゴール前でカクンッと落ち、惜しくもバーに当たって、弾かれた。


ピッ、ピーー!!


「ここで前半終了!!最後の最後に見せつけましたね」


「そうですね。あれだけでも、相手にはプレッシャーになりますから」


イランの選手に、傑には、弾丸ロングキックがあると植え付けることができ、前半を終えた。


「これで、後半やりやすくなるな」





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