第10話 帰国後と過去
帰国した、傑と遥が1番に向かったのは、母・美咲の元だった。
「おかえり。二人とも」
「「ただいま」」
そんな二人を見て、美咲はニヤニヤが止まらなかった。
「良かったな〜、二人とも」
「ああ。おかげさまで」
「っ!!!」
さらりという傑を、遥は信じられないような顔で見ていた。
「ん、どうした?」
「え、いや、なんでも・・・・」
美咲は、ますますニヤつきが止まらなかった。
傑が正式に息子になったのだ。嬉しくないわけがない。
「そうだ。傑を呼んだのには理由があるんだ」
ここで美咲は、急に本題に移った。
「お前の両親の居場所がわかった。中国にいる」
「中国に?」
なぜわざわざ中国に・・・・・
「お前にも施された実験、まだ凍結されていなかった」
「・・・・・・は?」
あんなことをまだ!?
「なんで・・・・・」
「さぁな。だがおそらく、お前を超える人間を作るためだろう」
「ってことは・・・・ワールドカップに?」
「ああ。お前の弟とも言える奴が出てくる可能性が高い」
「推測ばかりですまんが、実験を凍結させる方法はただ一つ・・・」
”オリンピックで優勝すること”
「そうすれば、お前以上の人間はできないと諦めるかもしれん」
「そうかもですね。あの人たちは、サッカーにやたらと力を入れてますから」
俺が、あの施設に入れられる前から実験は行われていたらしい。
自分の息子を入れることを決めたのは、データが十分に取れたからだ。
そのデータの分、犠牲になった子供たちは多い。
「肉親とはいえ、これ以上はやらせない。なんとしてでも止める」
美咲が言うには、あの実験には大物政治家が関わっているため、そう簡単に手出しはできないらしい。ならば・・・・
「遥のこと頼みますよ」
本当は、自分で守りたいが相手の組織が大きすぎる以上専門家に任せたほうがいい。
「ああ、任せろ」
美咲と別れ、二人は、日本での実家に久しぶりに帰ってきた。
「久しぶりだな〜」
「そうだね」
ここで遥は、今まで聞いてみたかったことを尋ねた。
「ねぇ、傑。言いたくなかったらいいんだけど」
「なに?」
「その、傑がうちに来る前、どんなことしてたの?」
一度、ちゃんと聞いてみたかったが、なかなか聞き出せなかったのでこれを機に聞いてみた。
「あ〜、そんなに聞きたい?」
「うん。傑のことは知っておきたい」
今までの遙なら信じられない言動をした。
「わかった。そんな大したことないと思うんだけど・・・・・」
そうして、傑は、美咲に拾われるまで、あの試合の日まで、なにをしていたのか話し始めた。
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