父さんと俺
「亀うらやま」
「なんでだよ――。亀だぞ?」
「亀、喋らなくてなんであんな人気なんだよ」
「知らん。こいつらに聞けばいいだろ」
マサユキ(ゆきまる)加入と同時に個人のフォロワーがぐんぐん増えていた。亀だぞ?
あ、また増えた。
「…………」
「…………!」
「……」
「……?」
しか書いてないSNSをなんで皆登録していくんだよ!! そう言ってる間にもまた増えたし!
「まあ、これは気になりますよねー!」
「たしかに! 喋ったりするのか? とかどんな顔して亀ってるのか気になるね!!」
「こんな顔だが……」
く、確かに気になる。だって、亀なのにゲームが上手ぇ。いや、亀どうやってゲームしてるんだよ! 亀反応ねぇ!
答えが見れる俺達はあーって思うが、見れない相手には気になって仕方がないだろう。
「俺もそっちが良かった」
「マキが許さないだろ」
「そうなんだよな」
なんだかんだ俺は配信の仲間で
ゲームとかの話は男の方が見る位置が似てたりするから話しやすいんだよな。やっぱ、ユウキも地獄に引きずり込もうか……。でもナミが誘う様子は全然ないんだよな。ダメなのかな。
「それじゃあ、また明日」
「またー」
解散すれば、俺は一番に家に戻る。個人配信の前にいろいろ済ませないとダメだから。もちろん勉強も。
俺がなりたいもの。夢はとくになかった。ただ、流されるまま生きている。そろそろ決めなきゃな。
配信も、夏まで出来ればいいかな。部活みたいにさ。
ミツキ引退します! って、あー今からその辺も考えとこう。1月から3月は、はやいからな……。
マキちゃんにも言わないと……。
楽しい時間は大事だけど、将来の事も考えなきゃいけない。だって、俺はマキちゃんに約束したから。
かっこよくなるって。俺から告白するって。
情けない俺のままではいられないんだ。
「ただいまー」
家に帰ると、父さんがおかえりと言った。
母さんには口止めしといたけど、父さんも知ってたりしないよな。
「父さん、進路何がいいかなぁ」
「んぁ? 急にどうした?」
いきなりの質問に戸惑っていたが、それなりに話に付き合ってくれた。父さんは目指している道があったからかなり一直線で向かったそうだ。俺とは違う。だけど、しっかり目をみて話してくれた。まだ何も浮かばないなら、そのまま何でもなれるように続ければいいって――。自分の未来は自分で選べって――。
あと、なんか彼女を大事にしろよとも言われてしまった。もちろんそこは大丈夫だ。
けっこう長く話し込んだせいで、配信が遅れてしまったりしたが見にきてくれる人はいつも通りにきてくれていた。
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