常連の応援にホッとする俺

 またこの人か……。

 メッセージ新着をお知らせする赤い点がつくメッセージ箱。そこを開くとパラパラと色々なメッセージとともに似た英数字羅列のかたまりがある。

 最近何度もブロックしたこのID。数字を変えて何度も何度もメッセージを送ってくる。

 俺はまたいつものようにブロック削除する。


『いつも見ています』


 この位なら嬉しいメッセージだった。だけど、だんだん過激になっていくこの人。


『オレを見て、オレだけのミツキちゃんになって』

『会おうよ、リアル見せてよ』

『君の本当の姿を知ってるよ。バラされたくなかったら返事してよ』


 身バレするような発言はしていないし、ただの引っ掛けだろう。だけど、見にきてくれる人が増えるほど応援だけじゃなくて、違う言葉ももらうようになる。

 うーん。めんどくさいなぁ。

 俺は少し考えながら、ミツキのスイッチをいれた。


「皆、こんばんにゃー! 今日は少しおそくなっちゃった。けどけど、素敵な衣裳が届いたの。はやくお披露目したいなぁ! 新デザインはまたまたコネクトデザインファクトリー様。この可愛い服を作ってくれたところにゃんだ」

「可愛い衣裳でしょうね!」

「楽しみー!!」

「いつですか!!? 待ち遠しいぃ」


 書き込みがざぁっと流れていく。何人かは見慣れた名前。この中にあのメッセージを送ってくる人がいるのだろうか。


「えっとね、それはまたチームけもラブの番組で発表するから、見にきてねー」

「うぉぉぉぉ、行きます! 絶対見に行きます!」

「りょうかいです!」


 そして、目にしてしまった。


「学校終わってからですよね。はやく会いたいな」


 心臓がばくばくと音をたてる。俺は学生なんて一言も言ってない。

 名前は、……わからない。tkg。三文字の羅列。俺には卵かけご飯にしか見えない。

 無意識のうちに学校終わったーとか口に出してしまったのだろうか。


「それじゃあ、ゲーム配信始めるね!」


 少しだけ震える指をおさえながら、俺はいつものようにゲーム起動する。

 身ばれしたら、ヤバい?

 たまたま今は知り合いばかりから、安心していた。でも見知らぬ他人にばれた時、――俺はそこまで考えてなかった。

 もし、このアバターにそっくりだからという理由で、このメッセージを送ってきたやつがミツキをマリヤだと勘違いしたら……なんて。


「うぉぉぉぉ、ミツキちゃぁぁぁぁぁん、かわいぃぃぃぃっ!!」


 常連さんの叫びを見て、少しホッとする。応援してくれる人もいるんだ。気にしすぎても楽しくないよな。俺はそう決めてゲームの世界に集中した。

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