目が釘付けになる俺

「マキちゃん」


 今から会いに行くつもりだった人が――、目の前にいる。

 一人で向かっていたら(いや、もともと帰り道ではあるのだけど)商店街を抜けるところで、ソフトクリームを購入しているマキちゃんがいた。ナミは見当たらない。こちらに気がついたマキちゃんはソフトクリームを食べながら近付いてきた。


「樹君、今日は体調どうですか?」

「え、あ、体調?」


 悪くはない。めちゃくちゃ悩んでいる以外は、いつも通りの体調だ。


「大丈夫だよ」


 そう言うのが精いっぱいだった。言おうと決めたはずなのに、いざ本人を目の前にするとドキドキがおさまらない。


「そうですか、なら今日は出来ますよね?」

「え?」

「え? ゲーム部はまだ無理ですか? やっぱりまだキツイですか?」

「え? え?」


 話が見えない。俺はいったいどういう事になってるんだ? もしかして、ナミが何か言ってるのか?


「熱が出る、うつらないけど変わった病気で、薬が効くまでそっとしておいてって聞いてましたが……、薬が効いて熱が下がったから学校に行っていたんですよね?」


 可愛らしく、首をかしげるマキちゃん。

 そうか、俺はそんなことになっていたのか。……たしかに、悩みすぎて熱がでそうだったよ。薬なんて、ないけどな!


「あぁ、もう大丈夫。元気だよ」


 まあ、結果次第で今度はへこむかもしれないけれど。


「そうですか。少しだけ待って下さい。食べてしまいます」


 そう言って、マキちゃんは近くのベンチに腰かけ、横をぱしぱしと叩く。これは、ここに座ってろってことか?

 ぱしぱしがあった場所に座ると、にこにこしながら、マキちゃんはソフトクリームの続きを食べ始める。この後、ゲームをするならおやつもたべるだろうに……。

 女の子のカロリーってどこに行くんだろうか……。

 そっと横を見ると、制服姿のマキちゃん。首もと、ブラウスの一番上のボタンを外しているのが目にはいる。そしてそこから……。


「樹君は食べないのですか?」

「え?」

「そんなにじっと見られると食べづらいので、食べたいなら自分のを買って下さい」

「あ、あぁ、ごめん」


 立ち上がって、俺はマキちゃんの真っ白とは違う、バニラ味とチョコ味のミックスソフトクリームを頼んだ。


「あ、それも食べたい……」


 横に座りなおすと、そんな声が聞こえた。別腹…………、本当にあるのだろうか。

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