第5話

 一週間が経ち、楓は、再び八木の指名を受けた。その日、八木は、楓の持参した道具を使うことはなく、自分で持参した一本鞭を使った。店長には前もって話し承諾を得ていた。

「一本鞭ですか」

 見るなり、楓は怯えた。経験はないが、かなりきつい鞭だと言うことぐらいは知っていた。お店のM女さんのほとんどがNGだった。

 両手をひとつに縛られ、頭上に吊られた。無防備に晒された裸体。打たれても防ぎようがなかった。不安が膨れ上がり、恐怖で震えた。

「気を楽に持って。大きく深呼吸をするんだ」

 前置きなんか聞きたくなかった。何も言わずに打たれた方がどんなにいいか知れない。気遣われたら、余計に怖い。

 仕方なく、大きく呼吸をする。

「打つよ」

 楓は、ごくりと唾を飲み込んだ。

 鞭が振られた。

 ひゅん!

 空気を切り裂く鋭い音がした。二度、三度と繰り返し耳に届いた。いよいよ怖い。

 と、尻に痛みが走った。きつくはないが、それなりの痛みだった。痺れ、尾を引いた。わずかな間を置いて二つ目、反対側の尻を打たれた。

「あひっ」

 痛みが、一度目より強かった。長く痺れが続いた。

「あうっ!」

 三度目、背中を狙われた。痛みは緩かったが、体がよじれた。バラ鞭とは比べ物にならない。

 尻、、背中と打たれ、次は…

 いきなり、痛烈な痛みに襲われ、尻が揺れた。赤い筋が立った。楓の足が跳ね上がり、体が弓なりにのけ反った。

 八木は何も言わず、打つ手を重ねていった。尻、そして背中。列車が徐々に加速していくように、振られる鞭に力が加えられていった。

 白い肌が、ボロボロになった。無惨に傷ついていった。

 やめて!

 泣き叫ぶ声を切り裂いて鞭が飛んだ。


 意識が朦朧とする楓が、八木に抱かれていた。体が熱く火照った。熱い包容。ひどく打たれ、恐怖のただ中に居るはずの楓が、無我夢中で八木にしがみついていた。    




 

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