第3話
八木の責めは、優しいものだった。始めに鞭を打たれた。
両手を頭上高く吊り上げられた裸体。無防備で、打たれても防ぎようがなかった。楓の顔が強ばった。
強く打たないで!と祈った。
八木は、手に握ったバラ鞭を振り上げた。その鞭が、楓の若く白い尻に降り下ろされた。
ばーんっ!
重量感のある音が辺りに鳴り響いた。尻の皮が波打って揺れた。
「あっ!」
思わず、楓は声をあげた。痛いと、先入観を持った鞭は、打たれてみればさほどの痛みはなかった。
その後も、尻だけでなく、背中や乳房にも鞭が飛んだが、どれも痛みはそれほど感じなかった。八木は、楓がプレイが初めてなのを気遣い、緩い鞭に終始したのだった。
縛りと鞭、二つを経験して、八木との初めてのプレイは終えた。
店に帰った楓は、店長に報告した。すると、
「明日に予約が入ったよ。よほど気に入ったんだね、楓ちゃんのこと。よかったね」
気に入ってもらえることは嬉しい楓だった。それも、縛りが上手な八木さん。楓は心待ちにした。たった一度の縄に、楓は眠れない夜を過ごした。
「また来たよ」
昨日から今日。長い一日に感じた。八木に会ってみれば、つい先ほどのように昨日が感じられた。
「よろしくお願いいたします」
八木は、シャワーを一緒に浴びようと言った。楓は、後ろ手に枷をかけられて風呂場に連れて行かれた。
楓は、枷をされたままシャワーを八木の手で浴びた。シャボンを手のひらにたっぷり注いだ八木の手で、全身をゆっくりと滑るように洗われた。そうして終えてみれば、楓だけが洗われていた。
楓は、洗って差し上げますと言ったが、ご主人さまのすることに口答えをしてはいけないと言われて、何も言えなくなった。罰として、仕置きされた。
昨日は緩かった鞭を強く打たれた。縛りも同じ、両手を頭上に吊り上げられた。
何度も繰り返し鞭打たれ、肌が赤く変色した。尻も、背中も、乳房も。痛みが感じられ、楓は震えた。手首の縄が、肌に固く食い込んだ。
もっとも怖かったのは、許しを乞う声に応えてもらえずに打たれ続けることだった。
楓の額に汗が吹き出て息が苦しかった。いつ、やむか分からない。全身に汗が吹き出て肌を流れた。
無言を貫き通す八木。そんな八木が、楓は怖かった。昨日見せた優しさは何だったのか…。
ようやく終えた鞭打ちの仕置き。楓は、それで解放された。
店に帰ると、明日に予約が入っていた。予約したのは八木だった。
楓は怖く、手首のごつごつした縄痕を見つめる顔が強ばった。
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