第03話 魔術使ってみる
オッス!オラ人形。
前世で命を落として、目を覚ましたら人形になっちまった!
あげくに貴族風のスキンヘッドのおっさんに買われちまった!
これからどうなっちまうんだ?
オラわっくわくしねぇぞ!
……はぁ。
冗談の一つも言ってなきゃやってられない。
貴族のおっさんに買われてから数日が経過した。
私は今長方形のガラスケースに置かれている。
部屋を見渡してみると、私と同じように他の人形もガラスケースに入っていた。
なんか某ディ〇ニー映画の某カ〇ボーイを思い出すわね。
ここはさしずめ集めた人形を保管するための趣味の部屋といったところか。
厳格な顔をしたスキンヘッドのおっさんの隠れた趣味だろうか。
誰得だよ。
私は棚や物を利用して窓がある場所までよじ登る。
窓に着いて、外を見るとそこには街並みの景色が広がっていた。
ここは中世だろうか?
建物の特徴や馬車、人の服装から見てそう結論付けた。
しかし、それだと少し違和感がある。
この世界には、カメラのようなものが存在している。
もし中世の時代ならばカメラなど存在しない。
しかもポラロイドカメラのようなものだった。
カメラのようなものの存在が分かったのはあのスキンヘッドのおっさんが使ってたからだ。
あのおっさんは事あるごとに私をガラスケースから出すと、私を台に立たせて写真撮影みたいなことをしてくる。
時には私の体の態勢を変えて、ポーズを変えたりする。
私の体を触った時に「む?妙に柔らかいな。」とかほざいていた。
その他には写真撮影しながら、「う~ん。いいねぇ。最高だぁ。」とかスケベなカメラマンみたいなことを言っていた。
はぁ。ストレスが溜まる。
疲労は感じないのだが、精神的に疲れる。
ここから出たいわ。
でも私のいる部屋は1階ではなく、少なくとも3階以上はある。
飛び降りるにしては高すぎるし、この体で飛び降りて無事でいられるかどうか分かったものではない。
仮に無事だったして、その後どう脱出する?体が小さすぎてドアノブまで届かない…。
それに私がいる場所は城のようだ。外に城壁もある。
この体で誰にも見つからずに城を出るなど不可能だ。移動速度も遅いもの。
あのおっさん結構偉い人なのか?
しかし、そんなことはどうでもいい。
出たい。マジで。出たい。
これが一生続くとかマジ?
勘弁してほしい。
けれどどうしたものか。
どれだけ考えても八方塞がりだ。
今度こそ詰んだ。人生詰んだ。
……。
そう言えば、この世界には“魔法”という概念が存在する。
私も使えないかな…。使えれば脱出できるのだけど。無理か。
いや、待てよ。まだ可能性はある。
そもそもだ。私は今人形である。
普通に考えて、人形が自我をもって動いたり、喋れたりすることはおかしいのだ。
え?異世界だからそれでも不思議じゃない、だって?
確かにそうかもしれない。しかし、私にはそうは思えない。
人形が動くことが常識と世間に認知されているのなら、どうして他の人形は動かないのかしら。
動けるけど、動かないだけかもしれない。そう思って他の人形にも触ったり、頬をひっぱたいたりしてみたのだけど、全く動かなかったわ。
もし動いていたら「おう。お前が今日から入った新入りか。」とか言いながらやってくるでしょうね。
つまり、私がおかしいのだ。私だけが
そう仮定して考えると、私はどうやって動いているのだろう?
物を自動で動かすのであれば動力はあるはずだ。ましてや人形の体を動かすのであれば、普通の方法では動いていない。
中身は空洞だもの。絶対電気とかでは動いていない。
この世界で当てはめるのならば、魔力が動力源である可能性は非常に高い。
それに魔法の力の源といったら魔力じゃない?
つまりよ、理屈で言うのなら私も魔法を使える可能性は高いわけよ。
多分いける。いける。…いけるはずだ。頼みますお願いします…。
ふぅー、よし。早速試してみるわ。
「はぁ!」
手のひらを前に出して気合の入った声も出してみた。
うん、駄目ね。全然でないわ。あれ~おっかしいなぁ~。
…泣いていいですか?むしろ泣きたい!
なんだろう何が足りないんだろう。何かが足りない。そんな気がしてならない。
魔法を出す時って、何を意識して出してるのだろう?
何かイメージしたりするのだろうか。もしそうだとしたらそうね。
氷を出すことをイメージしてみましょうか。
よし、それでまた試してみよう。
その時、私の目の前から氷の塊が出現し、弾丸のように発射される。
バァン!
と大きな音が立つ。
「あ、なんか出た。」
今の氷よね?
やった。私も魔法使えるわ。よかったぁ…。本当に。
ていうか、威力ヤバくね?
壁貫通したんだけど。まあいいや。
よし、脱出しよ。
あばよ、おっさん。
もう二度と会いたくないです。
正午の頃。その男は突然私の目の前に現れた。
何やら困りごとがあったらしい。非常に深刻そうな顔をしていた。
私はその男の話を聞くことにした。
だって困っている人を助けるのは当然でしょう?
いくら見ず知らずの人でも困っているのなら助けてあげたい。
そんな思いがあり、男の話を聞いた。
「なるほど、そんなことがあったんですねぇ…。」
「えぇ、そうなんです。非常に困っていましてね…。」
どうやらこの男の商売を邪魔をする存在がいるらしい。そして、その存在は決まって男が商売した後に襲撃してくるらしい。
それも魔術を使ってだ。なんて悪質なのだろう。
「怪我とかは大丈夫なんですか?」
「えぇ、その点は。魔術を使っているといってもこちらを殺してはこないですね。俺が追い払らわれて、追い掛け回されるだけですね…。」
なるほど、どうやら殺意はないらしい。
その点にホッとする。
「それであなたの商売の邪魔をする人はどんな人なんですか?特徴とか。」
「特徴ですか…。そうですね、小さかったですね。」
「小さい、ですか?」
「そうですね、一言で言うなら小人でしたね。人形みたいな感じでした。というよりはあれはおそらく人形でしょうね。人形って、人形術師でもない限り動かないはずなんですが…。」
ピクッと眉が動く。
「人形!?人形ですか!?本当ですか!?」
私は目を見開き興奮しながら、相手が言った言葉を確認する。
「え、えぇ…。」
おっといけない。
人形と聞いて思わず我を忘れてしまったわ。
相手が若干引いている。悪い癖が出てしまった。
しかし、その話が本当だとするのなら…。
「私、協力します!」
「本当ですか!?いやぁ、非常に助かりますよ。」
「私は何をすればいいんですか?」
「そうですね。私の後をつけて、私が商売をした後にそいつが現れたら倒してもらえれば。」
「なるほど、わかりました。」
「そいつは決まって夕方ぐらいに現れるのでそれまではここで待機してほしいです。」
「夕方までですね。了解です。」
「では、また。」
そう言うと、男は去っていく。
私はそれを手を振って見送る。
それにしても動く人形か…。
「ふふふ…ふふ…ふひっ。」
いけない。興奮のあまりよだれが出てしまった。
「動く人形…。間違いないわ。きっと
そう言い、少女は妖しく笑う。
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