おやすみ

 散歩が終わってから風呂に入った。そして今、俺はなぜか翔子さんと一緒にダブルベッドに寝ている。 


「ドキドキするでしょ」


 ドキドキさせている張本人が言ってくる。彼女の艶かしい雰囲気が間接照明によって増している気がする。


「やっぱり俺、ソファで寝ますよ」


 耐えられないと思い起き上がり、ベッドから出ようとすると腕を掴まれる。細くて長い指がさらに鼓動を速くさせる。


「だ〜め。健太は私と一緒に寝るの」


「酔ってます?」


「全然、今日はお酒飲んでないし」


 余計にタチが悪いなと思った。俺はため息を吐いてから再びベッドに寝た。


「良い子、良い子」


「俺が狼になったらどうするんですか?」


「大丈夫。私は健太を信頼しているから」


 そう言われると何もできない。何もする気はなかったが間違いも起こせそうにないとこの瞬間わかる。


「健太とは、そんな安っぽい関係になりたくないよ」


 その言葉の意味がわからず俺は眠りに落ちた。






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