第四十八回 降る雨の慕情の中。


 ――舞い落ちる天の恵み。かつての豊作を願う農民の心境。干ばつからの解放。



 ならば僕らは、最高のインスピレーションの解放……


 火照った裸体を、冷ます雨。芸術棟から少し出たなら、体感することができる自然との一体感。本年はプールもなかっただけに、ナチュラル・シャワーで少しばかりは、


怜央れお君、描けそう?」


「自然繋がり。ということだね、葉月はづき


 そしてまた、二階に上がってアトリエへ。解放した裸体は、僕だけではなくて怜央君もまた……身も心も描き合う。それを表すものこそ、百号のキャンバス。作品なの。



 この一枚のアクリル絵こそが、僕らの集大成。

 そしてまた包み隠さずの作品。私学展に向けた情熱の証で、僕らの全力全開だ。


 大胆な中にも繊細な心……


 裸体が語る十四歳の女の子と男の子の、不安定な心情。


 されど、今でなければ描けない未完成な女と男の有様。ここから始まる世界観への鼓動も併せて。そして今日、八月二十四日。僕の十四歳の誕生日に、作品は完成した。


 絵の具で汚れた裸体こそが、


 僕らのユニホームとなるのだ。折角となるのだから、洗い流すのも、ナチュラルに飾る雨なのだ。通り雨だから、虹を見る頃には完了。そこから得る感動も。


 そう思って、


 僕らの作品には、もう虹が架かっている。そのタイトルは『レインボー・ブリッジ』となった。僕だけではなくて、怜央君も一緒に傍で考えたタイトルなの。


 そしてここからが、お誕生日会……


 そういえば、令子れいこ先生も今日がお誕生日。僕と同じ日なの。でも今年は僕らで、僕と怜央君で二人で、僕のお家で一緒にバースデーケーキを食する予定となっているの。



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