第四十七回 踊る筆は心躍る証。


 ――或いは駆け抜ける筆。アクリル絵の具は、僕の意のままの演出をした。



 時に大胆、時に繊細に、裸の……

 何も身に着けない僕と、怜央れお君を描いていく。全部の思いを込めて。



 恥ずかしさも正直に、包み隠さず。女の子と男の子の身体の違いも、お互いがお互いを見たまま感じたままに、……そうだ、好奇心さえもモチーフに。


 僕は、それが怜央君だから。

 怜央君は、それが僕だから。


 最高のモチーフとなっているのだ。肌に付着する絵の具の感触さえも、その時の大きな表情となる。気が付けば、お互いの裸も絵の具まみれ。これこそ、自然にできた色。


 それさえも……


 それさえも描くための一部。百号のキャンバスに浮かび上がる、僕と怜央君のお互いの姿。全裸で向かい合わせになって、手を繋ぎ合っている。背景は、広大なる海……



 あの日に見た海だ。


 幼き日に泳いだ海。……それはまた、千佳ちか先輩が送ってきてくれた写メール。ビキニスタイルの彼女と、梨花りか先輩が映っていた背景にある海。それは同じ場所なのだ。


 だからもう、僕の手の中にある。


 或いは脳内に刻まれた記憶の中に。そして怜央君は、僕から見えない僕を、怜央君だけが知っている僕を描いている。それは、男の子から見た女の子にも通づる内容。


 考え方が違う……


 違うからこその探求心。その集大成ともいえる絵の内容だとも思える。掘り下げていくうちに、きっと答えに辿り着くの。僕らの求めている答えは、そこにあるのだ。


 それこそが――僕らの大いなるテーマとなるようにも思えるから。



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