第十章 ――断固。

第四十六回 覚悟が必要なこと。


 ――喩えるなら、この度のオリンピックもそのうちの一つと考える。



 時の国の長が、断固としてオリンピックをやり切ると、強く民に届くほどの意思を届けたのなら、きっと結果は、少しばかり違っていたと思う。その熱い思いは届くの。


 僕ら若人が、きっと力になる。


『よし、やったろうじゃん!』との心意気。僕の少しお兄ちゃん世代なら、きっと熱くなると思えたから。緊急事態宣言も何のその。ルールも強固に守られていたと思う。



 漲るエナジーが変えるの、拡大する感染の流れを。


 今はもう通り過ぎた出来事なのかもしれないけど、それでも僕は描くの。


 部活動から逸脱しても、

 個人でもやる覚悟。だから今日も芸術棟へ。アトリエに身を投じた。……ここからはもう、僕が私学展を目指して戦う物語と化する。その覚悟の証として、僕は何も身に着けないの、この場所では。全裸こそが作業のスタイルだから。眼鏡も、お下げもしていない。


 生まれたままを表現する。


 絵を描く時は、いつも初舞台の心構え。蘇生の儀なの。


 瑞希みずき先生の恩計らいで、芸術棟での活動は学園内ではなく、令子れいこ先生の御家の敷地内で行われるという形になる。入るのも裏門から。令子先生の宮殿ともいえるビッグな規模の御家の一部となる。僕は、百号のキャンバスを描けるスペースを手に入れたのだ。


 スペースは、ある意味、宇宙を意味する。


 そこが僕の舞台となる。宇宙の海となる。僕にとっての青春あおはるを懸ける海となる。


 ――すると、来られた。


 僕のパートナー。或いは僕が彼のパートナーとも思えるけど。


葉月はづき、始めるか」


 と、怜央れお君が。僕と同じ思いを持つ熱き心。高校球児のように熱き心で挑むの。



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